安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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一年365日
一年、365日。
心の休まる日なんて、なかった。

気を抜けば、待っていたのは死だった。
或いはそれで死んでいた方が、色々な人のためだったのかもしれない。

ぼくが進んで殺した人はいないけど。
ぼくがいなければ死ななかった人は、きっといた。
ぼくが、殺してしまった、人が。

聞いたのはあの人で、告げたのはぼくで。
指図するのはあの人で、手助けするのはぼく。
ぼくが、いなければ。
逃げ切れたかもしれない人は、きっと、いた。

くる日もくる日も、ぼくは予知を続けて。
一年365日、休む事無く人を不幸にする手助けをした。
代わりにあの人が得をする。

他人の命を取り上げて、あの人は自分の未来を広げていく。

そうだぼくは知っていた。

ただ視てないふりを、していただけ。


ぼくはこの人と、無数に積み上げられた屍の上に立っている。












//16歳
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君が描いた僕の顔
「何を描いているの?」

聞けば、きみはぱっと顔を上げて、太陽のように笑う。
そして少し得意げに、言った。

「おかあさん!」

軽く目を瞠る。
それから瞬いて、言葉が脳に浸透した辺りで微笑んだ。

きみは知らないだろう。
ぼくがどんなに嬉しいか。
ぼくがどんなに幸せか。
ぼくがどんなに。

きみの一挙一動に、心を踊らせているか。

細いストレートの髪は、撫でるとさらさらと揺れる。
また紙に目を移したきみは、小さくて、でも、とても、大きい。
きみが今、此処にいる。
それがこんなにも、泣きたいくらい、嬉しい。

「かけたらあげるね!」
「・・・・・・うん。ありがとう」

きみが描いたぼくの顔。
ぼくは笑っているだろう。
だってきみがいるだけで、ぼくの世界から悲しみは消えるから。

「ねえ、匠」

ぼくはね。

本当に、申し訳ないくらい、幸せ、なんだよ。

「宝物に、するね」

ぼくがこんなに幸せになってしまっていいのかと、考えてしまう、くらい。





生まれてきてくれて、ありがとう。











//29くらい?(本当に実現するかは微妙・・・生きてれば多分
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どうあがいても相容れない
ゆるゆると。
もしくは、ゆらゆらと。

思考が揺れて薄れて歪んで、何もわからなくなっていく。

何も感じなくなっていく。

心が冷えて、固まって、砕けて消えてしまったように。

夢を見た。
ぼくの好きな人が、ぼくと話している夢。
彼がぼくを。
恐がる、夢。
誰のものかわからない声が言う。

所詮。
所詮、お前はどうあがいても―――――・・・

「ばけもの」と。
彼の口が、動く。

また声は、言う。

―――――人間とは、相容れない。


お前はバケモノだ。


夢。
ゆるゆると。
或いは、ゆらゆらと。

思考が揺れて、薄れて、歪んで。

夢と現実の境界が消えていく。

あれは、ほんとうに、ゆめ?
あれは、ほんとうの、きおく?

ほんとう、って。



なに?



ぼくはそこで、考えるのを、止めた。

ぼくは。
とてもとてもとても、弱い。

こえ、が、いう。

「・・・・・いい子だ、花梨。・・・いや」

ぼくは、みみを、ふさいだ。

「違う名をやろう。『花梨』など捨ててしまえ」

ぼくは。

言われるままに、「ぼく」を、切り離した。

だってそれが、いちばんらくだったから。








//22歳?(多分)
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半信半疑
ボスが死んだ。

そう聞いても、一瞬理解出来なかった。

あの人が。
あの、恐い、人が。
悪魔のように狡猾で、人ではないように冷徹だった、ボスが。




本当に?




信じていいのか。
喜んでいいのか。
ぼくは。
ぼくは――――・・・?

じゆう、に?


「・・・・・本当に?」


ぬか喜びではないのだろうか。
本当は生きていて、此処から出た瞬間、あの目がぼくを見るのではないだろうか。
本当はそこに居て、ぼくを嘲笑(わら)っているのではないだろうか。
本当は。
今もぼくを処分しようと、目を光らせているのでは、ないの、だろうか。

信じたい。
信じたいのに・・・・っ!!



信じて裏切られるのが恐いのも、また、紛れもない事実。









//22歳くらい?
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体温計
この世の終わりのような声だった。
悲痛で悲嘆に呉れた、悲鳴のような。

「ない・・・ない。どうしましょう・・・・・!」

どうしたの?
と、ぼくは聞く。
取り乱している母は、一心不乱に引き出しを探しながら、独り言のようにぼくに答えた。

「体温計がないの・・・!」

父が熱を出して。
母が心配そうに、涙目で看病していた。
ぼくは一人でお絵描きをしていた。
父と母の仲が良いのはずっと知っていたから、そんなやりとりも然程珍しくはなくて。
ぼくも父は心配だったから、力を使った。

「体温計が見つかる未来」が視えるまで、母の未来を探る。
その未来は少しだけ先で、ぼくは立ち上がった。
未来を視たと気付かれないようにと幼心に考えながら、母の服の裾を引く。

「この前、あっちの上においたの、見たよ」

そして体温計は見つかって。
母にありがとうと撫でられて、ぼくは嬉しかった。

覚えている。
よく、覚えている、光景。



『―――――ありがとう、花梨。よかったわ』

テレビのスピーカーから、声が流れる。
何か、虚脱感のような、喪失感のような、判断のつかない感情が体を支配していた。

「面白かったか?花梨」

そのビデオは、隠し撮りだった。
ぼくの瞳が青く変わり、失せ物の位置を告げる様子が、一部始終写っていた。
ぼくの後ろで、ぼくの「持ち主」が目を細める。

「理解したか?」

それは。
ぼくを此処に売るために、両親がぼくの能力を証明しようと提出した、テープの一部だった。

理解、する。

もう、ずっと前から。

暖かい、ぼくが「家族」と無条件に信じていた、日常の時から。

――――――・・・二人はぼくを売る気だった。


感じていた「暖かさ」、なんて。

全ては。


「帰る場所なんて、端からない」


まぼろし。









//10歳
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何か恵んでください
「ひーちゃんひーちゃん」

かつて人であった時の名を連呼する声に、ゆっくりと振り向く。
否。正確に言えば、かつて人であった時の名を勝手に愛称化して連呼しているわけだが。

「・・・・・・」
「何か恵んで」
「・・・・・・・・・」

・・・唐突すぎて何が何だかさっぱりわからない。
そもそも相手にする気が失せてくるのは私の所為だろうか。いや、恐らく違う。

「・・・・・・」

数秒だけ、正面から声の主を一瞥して。

両手を器にしてにこにこ笑っている顔にため息を吐き、次の瞬間。

無視することに、決めた。

ふいと顔を逸らし、姿を消す。
どうせいつもと同様、することは何もない。
ただこの世のどこかに、在ればいい。

「あー!ひーちゃん酷い!何かくれたっていいじゃん!!」

消える寸前聞こえた声に、眉を寄せた。
まぁどうせ、目隠しで見えはしない。

何故私がお前に何か恵まねばならん。

お前に何かやるくらいなら、それこそあの子に何か渡す。









//カミサマ
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経験を糧にして
こんなことくらいじゃ、ぼくは泣かない。
ぼくは弱いから、哀しくないとは言わないけど。くじけはしない。

だってぼくは本当にどうしようもない哀しみを、他に知っているから。

完膚なきまでに無視される意思。
使い捨てられていく命。
自分の所為で死んでいく人々。
どこまでも冷たい場所を。

だからぼくは、泣きも嘆きもしない。

大丈夫。

10年の月日を思えば、大抵のことには耐えられる。

経験を糧にして、ぼくは生きる。

少しは強く、なれたのだろうか。









//27歳?(とりあえず22歳以降)
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チョコレート乱舞!
右を見ても、左を見ても、前を見ても、後ろを見ても。

「バレンタイン」と「チョコレート」が、目に入った。

流石本番。
と、そんなことを思う。

薔薇を抱えて歩く男の人とすれ違う。
有名チョコレートブランドの紙袋を持った女性のグループが、楽しげに通りすぎた。
男女のカップルが身を寄せ合って歩くのも、多く見える。

こんなに凄かったっけ、と、それが感想だった。

ぼくの記憶の「バレンタイン」は、母さんが父さんに手作りチョコレートを渡す日で。
仲睦ましい両親は、ぼくが居ることを半ば無視してラブラブだった。
だから、かもしれないけど。
バレンタイン近くに繁華街に出た記憶もあまりなくて、こんなにチョコレート商戦が凄いような記憶もなかった。

人並みに甘いものは好きだから、嫌ではない、けど。

甘い、匂いが辺りに充満していて。
くらりと、眩暈がした。



コンクリートの無機質な部屋。
ぼくを囲む白衣の人。
注射針。
響く時計の音。
緩く立ち上る煙。

甘ったるい、香り。



記憶が途切れる、「実験」。


軽く首を振る。
これはチョコレートの香りだ。
それとは関係ない。

「バレンタイン」が溢れる繁華街で、ぼくは一人、喧騒の少ないほうへと歩き出す。









//20歳
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転んだことにも気付かない
必死で走る。
走って走って走って走れば、きっと、追いつけると思った。
きっと。

「待ってっ・・・・・!」

手を伸ばす。
悲鳴のような声と、荒れた息が、零れた。

「お願い、待って・・・・!!」

お願い。
お願いだから。
お願いだから、それだけは。

一瞬視界がぐら付いて、身体が動かなくなる。
すぐに視界を元に戻して、また必死で駆けた。
走り出してから、ああ今のは転んだのだと、気付いた。
本当に、無我夢中で。
転んだことにも気付かない。
涙で視界が滲む。
ぼろぼろと、まるで小さな子供のように泣きながら、ぼくは、必死で。

「―――――――待って!!」

それは。

それは、ぼくの、大切な―――――――!!









そこで目が、覚めた。

起き上がる。
涙の伝う頬を拭って、目頭を押さえた。

苦笑、する。

なんて、夢。




必死で追うほどに大切なものなんて、今のぼくには何もないのに。









//18歳
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すっごい殺し文句
「なぁそれって、すっごい殺し文句。自覚ある?」
「・・・・・殺し文句?」
「あ、自覚ない。日本人って謙虚じゃなかったっけ?うわ意外」

一を言うのに百を費やす男が居た。
煩いが、それなりに使い道のある男。
だから今生きていると言えなくもないが。

「もう一度言ってみ?」

にやにやと楽しげに笑って、俺を促す。
付き合う意味があるとは思わなかったが、此処で無視するのはまだ得策ではない。
「これ」の使い方は知っていた。

「―――――・・・・俺の物になれ」

言われた通り繰り返せば、身体をくの字に折り曲げて笑い出す。
一応「同僚」という位置に居るこの男は、言動に無駄が多い。

「お前のその顔でそんなこと言われたら、どんな女もイチコロだな」

笑い終えてから、そんなことを言い。
笑いを収めて、初めてすっと目を細めた。
どうやら満足したらしい。
この男は、こういう「他愛もない会話」が好きで、ついやりたくなるらしい。
無視するより、適度に付き合ったほうが終るのが早い。
これを経ればそれなりに使えるのだから、面倒なことだ。

「じゃ、行くな、樹。あと宜しく」

「ああ」と、適当に答えた。
それから、ふと思って笑う。

ああ。任せておけ。

ちゃんと跡形もなく、お前諸共吹っ飛ばしてやるから。

――――それがその男との、最後の会話だった。

ちなみに「殺し文句」は。
実際は別に殺し文句でもなんでもなく、ただ、そのままの意味だ。









//樹閃月

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その言葉を心に刻んで
「いいだろう。俺に利のある仕事のみ、金を積み立ててやる」

ぼくの決死の交渉を聞いて、「彼」は笑った。
そして頷く。

「その金額がお前の値段になって、尚且つ俺がボスになったら――――お前は自由だ」

賢しいガキ。
そう言っていた目が、違う言葉を写していた。

愚かで浅はかな、道具。

けれど、ぼくにはそれしか。
これだけしか、方法が見つからなかった。
どうすればいいかなんて。
わかるわけが、ない。

ぼくは「彼」が言った、その言葉を心に刻んで、生きた。

嫌でも、辛くても、悲しくても。
ぼくが未来を視て、「彼」が、ボスになれば―――――・・・。



そうしたら、ぼくは自由に。



「オメデタイな、お前は」

「彼」は。
今は「ボス」であるかつての「彼」は、あの時と同じように、笑う。

愚かで浅はかな道具だと、その目はやはり言っていた。



「お前に自由なんて、あるわけがない」



それはあえて目を逸らしてきたこと。
それは気付かないようにしてた、事実。

ぼくは。

「嫌がるお前を使う方法なんて、幾らでもあるんだよ」

ぼくは、嘘でもそれを、信じたかった。



そうじゃなければ、生きられなかったから。









//21歳?
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あなたの一番怖いもの
ぼくが一番怖いもの。それは。

「――――・・・花梨」

それは、声。
この男(ひと)の、声だ。

びくりと肩が跳ねる。
振り返りたくなくて自分で自分の腕を掴んで、ぎゅっと握った。
それでも震えは納まらない。

「花梨」

振り向きたくない。
――――――振り向けない。

後ろから髪を引かれて、頭皮が悲鳴を上げた。
反射的に、顎が持ち上がる。
声の主がぼくの前に姿を表して、視界に映った。
目を、覗き込まれる。

この、目も。
怖い。
この、人は。
こわい、ひと。

「呼んだら答えろと、教えなかったか?」

恐怖が心を縛る。
歯向かえない。
逆らえない。

「っ・・・・はい・・・」

きっと永久に、慣れることは、ない。









//13歳
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鬼は逃げた?
「鬼は、逃げるのかな」

ふと思いついて、そう、聞いた。
豆を撒かれて、外へと追いやられて。
言われるがままに、逃げるのだろうか。

節分で追い払われる「魔」の象徴。
古くから病気や災厄の元とされる、見えないモノ。
けれど。
逃げなくてはいけない何かを、彼らはしたのだろうか。
病気の原因はウイルスで。
災厄は鬼だけの所為じゃない。
全ての罪を被せて、追い払い、安堵して。

「・・・・何処に逃げるんだろう」

迎えてくれる場所はあるのだろうか。
逃げ帰る場所は、あるのだろうか。

そんなことを、思う。

「こんなこと考えるなんて、変かな?」

苦笑したら、「そんなことはない」と、言ってくれた。
ぼくはそれが嬉しくて、ほっとする。

ぼくの予知の所為で犠牲になった人は沢山居る。
ぼくが予知をしたから、死んでしまった人が、沢山居る。
そして全てをぼくの予知の所為にして逃げた人も、沢山、居る。
ぼくは異端の「バケモノ」だから、多くに蔑まれ、疎まれながら、利用された。
「お前があんなことを、言わなければ」――――・・・それはとても、よく言われた言葉。
ぼくは否定しなかった。
否定しても無駄だと知っていたし、それに。
それでその人が楽になれるなら、それでいいと思った。
それと半数以上は、その言葉が事実でもあった。

「鬼は外」と、言われて。
鬼は無事、逃げたのだろうか。
逃げ帰るべき場所に、帰れたのだろうか。

逃げ切れずに囚われていないといい、と、思う。









//21歳
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食べ物を粗末にしちゃ駄目
「鬼は、そと。福は、うち」

神社の豆まきを見て、少女はとても感動していた。
彼女には、豆が撒かれるごとに空気が変わっていくことがわかった。
宮司が文言を口にするたびに、「何か」がなくなっていくことがわかった。
凄いと思った。

帰りに大豆の入った小さな袋を貰って、少女は家路を急ぐ。
家では自分が、宮司の代わりをしようと、幼い義務感を抱いて。

「おにはーそと、ふくはうち!」

貰ってきた豆を撒く。
あまり外には飛ばなかったけど、それでも少しは効果があったように少女には思えた。
神社のように、明確にはわからなかった、けど。
それでも少女は満足だった。

帰宅した少女の母親は、散らばった大豆を見て、首を傾げる。

「・・・花梨?」

少女は手の掛からない子供だった。
悪戯も滅多にしないし、聞き分けのいい、楽な子供。

「お母さん!」
「花梨がやったの?」
「うん!」


「駄目じゃない。食べ物を粗末にしちゃ」


ぱちんと。

少女の中の小さな正義感と満足感が、弾けて消えた。

「・・・、・・・ごめんなさい」

少女は悲しげに、そう、言った。









//7歳
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目から鱗が落ちた
「――――――、え」

耳に入った声に、つい。
目を見開いて、手を止めた。

振り返る。

微笑んだその人は、優しい目のまま、はっきりと頷いた。

「・・・・・・ほんとうに?」

反射的に、嘘だ、と思う。
そんなことあるはずがないと。
だってぼくは。
たくさんの人を、蹴落として、不幸にして、生きてきたのに。
たくさんの、人を。
犠牲に生き長らえてきたのに。

「誰でも。生きている限り、誰でも。幸せになりたいと思っていいのよ。幸せになっていい。当たり前じゃない」

当たり前。
当然だと断言され、目から鱗が落ちたような気がした。
生きているかぎり、誰でも。
ぼくでも。

幸せになりたいと、思っていい?

「・・・・・・、・・・本当に。いいのかな」

今度も彼女は頷いてくれて。
胸が熱くなる。
見ている風景が歪んで、ぎゅっと目を瞑った。

「・・・ら、なら、ぼく」

彼女に倣って、微笑みを浮かべる。
暫らくぶりの微笑は、少し歪んだ。

「なら、ぼく、結婚したい、な。それで、子供を生みたい。それで、それでさ、その子を、幸せにしてあげたい」

望んでも、いいのかな。

目の前の彼女は、笑って。

本当に嬉しそうに、笑って。

「いいのよ」

そう言った。

嬉しい。
うれしい。
嬉しかった。

だから次に視えた未来に、血の気が引いた。

叫ぶ。

嫌だ。
待って。
止めて。
お願い。
お願いだから――――・・・!



戸惑う彼女の後ろに、悪夢のような、影が差した。



「困るな。俺のモノに余計なことを教えないでくれないか」



それが、初めてぼくを助けようとしてくれたた人の、記憶。










//12歳
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人の夢は儚いの?
夢には力があると、思っていたことがあった。
人は強く、夢を武器に戦える、と。
思っていたことが、あった。

それは幻想だと、思い知ったけれど。

人の夢、と書いて、「はかない」と読む。
触れれば壊れてしまう。
乱暴に扱えば、すぐに。
ガラスよりも脆い、それ。

壊すのは簡単だと、教えられた。



「残念だったな」



笑うことが出来るのは、一人だけ。

ああ今日も、此処では夢の壊れる音がする。









//14歳
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