食べ物を粗末にしちゃ駄目 |
2008年2月3日 20時36分
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「鬼は、そと。福は、うち」
神社の豆まきを見て、少女はとても感動していた。
彼女には、豆が撒かれるごとに空気が変わっていくことがわかった。
宮司が文言を口にするたびに、「何か」がなくなっていくことがわかった。
凄いと思った。
帰りに大豆の入った小さな袋を貰って、少女は家路を急ぐ。
家では自分が、宮司の代わりをしようと、幼い義務感を抱いて。
「おにはーそと、ふくはうち!」
貰ってきた豆を撒く。
あまり外には飛ばなかったけど、それでも少しは効果があったように少女には思えた。
神社のように、明確にはわからなかった、けど。
それでも少女は満足だった。
帰宅した少女の母親は、散らばった大豆を見て、首を傾げる。
「・・・花梨?」
少女は手の掛からない子供だった。
悪戯も滅多にしないし、聞き分けのいい、楽な子供。
「お母さん!」
「花梨がやったの?」
「うん!」
「駄目じゃない。食べ物を粗末にしちゃ」
ぱちんと。
少女の中の小さな正義感と満足感が、弾けて消えた。
「・・・、・・・ごめんなさい」
少女は悲しげに、そう、言った。
//7歳
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