安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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マスコット
小さな幼い女の子が、キラキラした瞳で、それを見ていた。
今子供たちの間で人気の、マスコット人形。
の、プレミアムバージョンと銘打たれた、女の子には巨大と言っても可笑しくない、それを。

「――――――・・・花梨?」

滅多に我儘も言わない子供が熱心に覗き込む様を見つけたのは、彼女の父親。
女の子はびくりと驚いて、慌てて振り返った。
なんでもないと、言う。
父親は笑って、女の子と目線を合わせた。

「かわいいね。欲しいのかな?花梨」

にこりと優しい笑みを向けられて、子供なりに必死で誤魔化そうとしていた女の子にも迷いが生じる。
恐る恐る、まるで怒られているように、申し訳なさそうに頷いた。

「そっか」
「・・・・・・うん」

こくりと頷いてしまえは現金なもので反応が気になるらしく、女の子はちらりと上目遣いに父親を見上げる。
口に出さないだけこの年頃の子供にしては偉かったが、全身で「買って」と訴えているようだった。

だが。
父親は優しく笑って、けれど「それだけ」だった。

「本当、かわいいね。じゃあ行こうか、花梨」

女の子は、一度だけ人形を振り返り、そして。

「うん」

精一杯、何事もなかったかのように、にこりと笑った。

それはとある日の、昼下がり。










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