安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

  新着アーカイブ  
ゾロ目[2
 (2010/11/11 12:51)
マスコット
 (2008/5/1 19:04)
多けりゃ良いってものじゃない
 (2008/4/30 18:51)
一生懸命
 (2008/4/25 18:53)
世界を見下ろす丘
 (2008/4/23 18:54)

  新着コメント  
新着コメントはありません

  ブログ内検索  

  カテゴリー  
最初に/設定(1)
21歳以降(70)
16〜20歳(35)
10〜15歳(29)
0〜9歳(6)
その他(18)


  月別アーカイブ  
2010年11月(1)
2008年05月(1)
2008年04月(12)
2008年02月(16)
2008年01月(5)
2007年12月(25)
2007年11月(25)
2007年10月(31)
2007年09月(30)
2007年08月(13)

目から鱗が落ちた
「――――――、え」

耳に入った声に、つい。
目を見開いて、手を止めた。

振り返る。

微笑んだその人は、優しい目のまま、はっきりと頷いた。

「・・・・・・ほんとうに?」

反射的に、嘘だ、と思う。
そんなことあるはずがないと。
だってぼくは。
たくさんの人を、蹴落として、不幸にして、生きてきたのに。
たくさんの、人を。
犠牲に生き長らえてきたのに。

「誰でも。生きている限り、誰でも。幸せになりたいと思っていいのよ。幸せになっていい。当たり前じゃない」

当たり前。
当然だと断言され、目から鱗が落ちたような気がした。
生きているかぎり、誰でも。
ぼくでも。

幸せになりたいと、思っていい?

「・・・・・・、・・・本当に。いいのかな」

今度も彼女は頷いてくれて。
胸が熱くなる。
見ている風景が歪んで、ぎゅっと目を瞑った。

「・・・ら、なら、ぼく」

彼女に倣って、微笑みを浮かべる。
暫らくぶりの微笑は、少し歪んだ。

「なら、ぼく、結婚したい、な。それで、子供を生みたい。それで、それでさ、その子を、幸せにしてあげたい」

望んでも、いいのかな。

目の前の彼女は、笑って。

本当に嬉しそうに、笑って。

「いいのよ」

そう言った。

嬉しい。
うれしい。
嬉しかった。

だから次に視えた未来に、血の気が引いた。

叫ぶ。

嫌だ。
待って。
止めて。
お願い。
お願いだから――――・・・!



戸惑う彼女の後ろに、悪夢のような、影が差した。



「困るな。俺のモノに余計なことを教えないでくれないか」



それが、初めてぼくを助けようとしてくれたた人の、記憶。










//12歳
コメント(0)トラックバック(0)10〜15歳