その言葉を心に刻んで |
2008年2月6日 22時03分
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「いいだろう。俺に利のある仕事のみ、金を積み立ててやる」
ぼくの決死の交渉を聞いて、「彼」は笑った。
そして頷く。
「その金額がお前の値段になって、尚且つ俺がボスになったら――――お前は自由だ」
賢しいガキ。
そう言っていた目が、違う言葉を写していた。
愚かで浅はかな、道具。
けれど、ぼくにはそれしか。
これだけしか、方法が見つからなかった。
どうすればいいかなんて。
わかるわけが、ない。
ぼくは「彼」が言った、その言葉を心に刻んで、生きた。
嫌でも、辛くても、悲しくても。
ぼくが未来を視て、「彼」が、ボスになれば―――――・・・。
そうしたら、ぼくは自由に。
「オメデタイな、お前は」
「彼」は。
今は「ボス」であるかつての「彼」は、あの時と同じように、笑う。
愚かで浅はかな道具だと、その目はやはり言っていた。
「お前に自由なんて、あるわけがない」
それはあえて目を逸らしてきたこと。
それは気付かないようにしてた、事実。
ぼくは。
「嫌がるお前を使う方法なんて、幾らでもあるんだよ」
ぼくは、嘘でもそれを、信じたかった。
そうじゃなければ、生きられなかったから。
//21歳?
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