安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で
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目から鱗が落ちた
2008年2月2日 01時13分
「――――――、え」
耳に入った声に、つい。
目を見開いて、手を止めた。
振り返る。
微笑んだその人は、優しい目のまま、はっきりと頷いた。
「・・・・・・ほんとうに?」
反射的に、嘘だ、と思う。
そんなことあるはずがないと。
だってぼくは。
たくさんの人を、蹴落として、不幸にして、生きてきたのに。
たくさんの、人を。
犠牲に生き長らえてきたのに。
「誰でも。生きている限り、誰でも。幸せになりたいと思っていいのよ。幸せになっていい。当たり前じゃない」
当たり前。
当然だと断言され、目から鱗が落ちたような気がした。
生きているかぎり、誰でも。
ぼくでも。
幸せになりたいと、思っていい?
「・・・・・・、・・・本当に。いいのかな」
今度も彼女は頷いてくれて。
胸が熱くなる。
見ている風景が歪んで、ぎゅっと目を瞑った。
「・・・ら、なら、ぼく」
彼女に倣って、微笑みを浮かべる。
暫らくぶりの微笑は、少し歪んだ。
「なら、ぼく、結婚したい、な。それで、子供を生みたい。それで、それでさ、その子を、幸せにしてあげたい」
望んでも、いいのかな。
目の前の彼女は、笑って。
本当に嬉しそうに、笑って。
「いいのよ」
そう言った。
嬉しい。
うれしい。
嬉しかった。
だから次に視えた未来に、血の気が引いた。
叫ぶ。
嫌だ。
待って。
止めて。
お願い。
お願いだから――――・・・!
戸惑う彼女の後ろに、悪夢のような、影が差した。
「困るな。俺のモノに余計なことを教えないでくれないか」
それが、初めてぼくを助けようとしてくれたた人の、記憶。
//12歳
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