経験を糧にして |
2008年2月16日 23時31分
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こんなことくらいじゃ、ぼくは泣かない。
ぼくは弱いから、哀しくないとは言わないけど。くじけはしない。
だってぼくは本当にどうしようもない哀しみを、他に知っているから。
完膚なきまでに無視される意思。
使い捨てられていく命。
自分の所為で死んでいく人々。
どこまでも冷たい場所を。
だからぼくは、泣きも嘆きもしない。
大丈夫。
10年の月日を思えば、大抵のことには耐えられる。
経験を糧にして、ぼくは生きる。
少しは強く、なれたのだろうか。
//27歳?(とりあえず22歳以降)
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チョコレート乱舞! |
2008年2月14日 23時41分
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右を見ても、左を見ても、前を見ても、後ろを見ても。
「バレンタイン」と「チョコレート」が、目に入った。
流石本番。
と、そんなことを思う。
薔薇を抱えて歩く男の人とすれ違う。
有名チョコレートブランドの紙袋を持った女性のグループが、楽しげに通りすぎた。
男女のカップルが身を寄せ合って歩くのも、多く見える。
こんなに凄かったっけ、と、それが感想だった。
ぼくの記憶の「バレンタイン」は、母さんが父さんに手作りチョコレートを渡す日で。
仲睦ましい両親は、ぼくが居ることを半ば無視してラブラブだった。
だから、かもしれないけど。
バレンタイン近くに繁華街に出た記憶もあまりなくて、こんなにチョコレート商戦が凄いような記憶もなかった。
人並みに甘いものは好きだから、嫌ではない、けど。
甘い、匂いが辺りに充満していて。
くらりと、眩暈がした。
コンクリートの無機質な部屋。
ぼくを囲む白衣の人。
注射針。
響く時計の音。
緩く立ち上る煙。
甘ったるい、香り。
記憶が途切れる、「実験」。
軽く首を振る。
これはチョコレートの香りだ。
それとは関係ない。
「バレンタイン」が溢れる繁華街で、ぼくは一人、喧騒の少ないほうへと歩き出す。
//20歳
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転んだことにも気付かない |
2008年2月8日 23時29分
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必死で走る。
走って走って走って走れば、きっと、追いつけると思った。
きっと。
「待ってっ・・・・・!」
手を伸ばす。
悲鳴のような声と、荒れた息が、零れた。
「お願い、待って・・・・!!」
お願い。
お願いだから。
お願いだから、それだけは。
一瞬視界がぐら付いて、身体が動かなくなる。
すぐに視界を元に戻して、また必死で駆けた。
走り出してから、ああ今のは転んだのだと、気付いた。
本当に、無我夢中で。
転んだことにも気付かない。
涙で視界が滲む。
ぼろぼろと、まるで小さな子供のように泣きながら、ぼくは、必死で。
「―――――――待って!!」
それは。
それは、ぼくの、大切な―――――――!!
そこで目が、覚めた。
起き上がる。
涙の伝う頬を拭って、目頭を押さえた。
苦笑、する。
なんて、夢。
必死で追うほどに大切なものなんて、今のぼくには何もないのに。
//18歳
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すっごい殺し文句 |
2008年2月7日 03時15分
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「なぁそれって、すっごい殺し文句。自覚ある?」
「・・・・・殺し文句?」
「あ、自覚ない。日本人って謙虚じゃなかったっけ?うわ意外」
一を言うのに百を費やす男が居た。
煩いが、それなりに使い道のある男。
だから今生きていると言えなくもないが。
「もう一度言ってみ?」
にやにやと楽しげに笑って、俺を促す。
付き合う意味があるとは思わなかったが、此処で無視するのはまだ得策ではない。
「これ」の使い方は知っていた。
「―――――・・・・俺の物になれ」
言われた通り繰り返せば、身体をくの字に折り曲げて笑い出す。
一応「同僚」という位置に居るこの男は、言動に無駄が多い。
「お前のその顔でそんなこと言われたら、どんな女もイチコロだな」
笑い終えてから、そんなことを言い。
笑いを収めて、初めてすっと目を細めた。
どうやら満足したらしい。
この男は、こういう「他愛もない会話」が好きで、ついやりたくなるらしい。
無視するより、適度に付き合ったほうが終るのが早い。
これを経ればそれなりに使えるのだから、面倒なことだ。
「じゃ、行くな、樹。あと宜しく」
「ああ」と、適当に答えた。
それから、ふと思って笑う。
ああ。任せておけ。
ちゃんと跡形もなく、お前諸共吹っ飛ばしてやるから。
――――それがその男との、最後の会話だった。
ちなみに「殺し文句」は。
実際は別に殺し文句でもなんでもなく、ただ、そのままの意味だ。
//樹閃月
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その言葉を心に刻んで |
2008年2月6日 22時03分
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「いいだろう。俺に利のある仕事のみ、金を積み立ててやる」
ぼくの決死の交渉を聞いて、「彼」は笑った。
そして頷く。
「その金額がお前の値段になって、尚且つ俺がボスになったら――――お前は自由だ」
賢しいガキ。
そう言っていた目が、違う言葉を写していた。
愚かで浅はかな、道具。
けれど、ぼくにはそれしか。
これだけしか、方法が見つからなかった。
どうすればいいかなんて。
わかるわけが、ない。
ぼくは「彼」が言った、その言葉を心に刻んで、生きた。
嫌でも、辛くても、悲しくても。
ぼくが未来を視て、「彼」が、ボスになれば―――――・・・。
そうしたら、ぼくは自由に。
「オメデタイな、お前は」
「彼」は。
今は「ボス」であるかつての「彼」は、あの時と同じように、笑う。
愚かで浅はかな道具だと、その目はやはり言っていた。
「お前に自由なんて、あるわけがない」
それはあえて目を逸らしてきたこと。
それは気付かないようにしてた、事実。
ぼくは。
「嫌がるお前を使う方法なんて、幾らでもあるんだよ」
ぼくは、嘘でもそれを、信じたかった。
そうじゃなければ、生きられなかったから。
//21歳?
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