安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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自己制約
ぼくは出来るだけ、自分の未来は視ないようにしている。
少なくとも、自分の意思では視ないように。
未来はわかっていてはいけないものだと思うから。
本来なら知らないものだと、思うから。

それはただの自己制約で。
破っても誰も怒らないし、必要を感じれば破ってしまうこともある。

ただそれでも、必要であっても、本当はやはり視たくはない。
知りたくない。
自分のこの先。
未来の道。
ぼくが、どう、なるか。

この制約は、ただ。
知ることが恐いから、逃げるための、言い訳。

恐いのだ。
恐い。
明日は、明後日は、明々後日は。
一年後は、二年後は、五年後は?

ぼくは、自由に、なれるのだろうか。
もしかしたら、一生。
ずっと、このまま、この建物の中で――――・・・。


それはとても有り得ること。
この裏の世界では、命の価値はとても軽い。
生と死は、紙一枚を隔てたくらいにしか、違わない。

絶望を知るのは、嫌だ。
それはとても、怖い、こと。

もし自由になれても、きっと違う恐怖が生まれる。
常に消えることのない、不安。
視たくない。

だからきっと、自己制約はずっと続く。









//14歳
コメント(0)トラックバック(0)10〜15歳
 


淋しさを覚え
言われなれてる言葉。
もう傷つくこともなくなったくらい、慣れてる言葉。

それでも、何故か淋しさを覚えて、神社に足を向けた。

神社には人影がなかった。
それでも何故か気分が和らいで、ほっとする。
淋しさが消えはしなかったけど、代わりに何かが満たされた。

「気持ち悪ぃ」
「へー。本当、バケモノって感じでいいね」

少しの間、共闘するという、別の組織の「ボス」。
世襲制というわけではないのに、まだ幼さの残る青年。
けれど。
あの男、ぼくの「持ち主」と、同じ目の、男。
さぞかし気が合うことだろうと、思う。

「気持ち悪い」も、「バケモノ」も。
どちらも数えるのが馬鹿らしいくらい、聞いた。
何度も何人にも、言われた。
慣れている。
それでも哀しくないわけではないらしいと、自嘲した。
脆いことだ。

「淋しい」なんて。
「弱い」を認めることと、同じ。

ぼくは弱い。

「君なら・・・」

「彼」は。
ぼくの異能や汚さを知ったなら、何て言うのだろう。









//21歳
コメント(0)トラックバック(0)21歳以降
 


この気持ち、隠し切れない
隠すことが難しい感情が三つある。

一つは嘲り。
この世は誰も彼も何て愚かしく、笑ってはいけない場面でもつい嘲笑が浮かぶ。
一つは愉悦。
要らないモノを壊すのはとても心地よく、血も悲鳴も愉快で仕方がない。それを隠すのは、とても難しい。

そして、もう一つは。

「よお花梨。まだ予知能力は顕在か?」
「・・・・・・・お蔭様で」
「まだ役に立ってるのか?ツマラナイな。実にツマラナイ」

心の奥底から湧き上がる、暗く昏い、欲望。

ガキの頃から細い首に手を伸ばす。
指で喉に触れて、輪郭に沿うようにつうと撫でて。

「・・・・触らないでくれる?」
「早く・・・早く、壊れればいいのに。ああお前、そろそろ予知が出来なくなればいい」
「その手を、退けて」
「ツレナイなぁ。同じ道具同士、ナカヨクしようとしてるのに」

ああ。

ああ、ああ、ああ。

嗚呼。

つい無意識に、舌なめずり。
顔に浮かぶのは、淫靡な笑み。
昏い欲望。
隠し切れない、衝動。
ああ、ツマラナイ。
あとほんの少し、数ミリ、ちょっとだけ。



――――力を篭めれば、殺せるのに。



「お前の血が見たいなァ・・・・断末魔が聞きたいなァ・・・なぁ、マダマダ顕在か?」



俺は初めてお前と向かい合ったその瞬間から、お前が殺したくて仕方がない。

一分一秒でも早く、お払い箱になればイイのに。

そうしたら。

完膚なきまでに完全無欠に、骨の髄まで苦しめて、心行くまで殺してやるのに。

「・・・・残念ながら、そんな予定はないよ」

この気持ち、隠し切れない。
そしてまた。

「それはそれは、ホントに、残念だ」

隠すつもりも隠す意味も、何処にもない。









//18歳

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どんな病も治せる薬
ヒトとは利用するものだ。

「―――――死ぬ人を、探せ?」
「ああ。耳は付いてるんだろう?二度は言わせるな」
「何をするつもり?」
「ちょっとした慈善事業だよ。聞いてどうする?どうせお前がやることは変わらない」

コレは今現在で、尤も使い勝手のいい道具。
連れて来られた病院で不審そうに俺を見て、けれど「仕事だ」の一言で動くモノ。
嘲笑は、いつも尽きない。
ただ最近は、少しイラつく。
いつも通りの気色悪い的中率。それはいい。
「仕事」と言わなければ動かない効率の悪さが、イラつきの原因だった。
もういい加減、悟れよと、思う。
躊躇いも拒否も逡巡も、どうせ意味はないのだ。
手間掛けさせずに、さっさとやればいい。
逃げ場はない、反抗は出来ないと、知っているのに無為に足掻く。鬱陶しい。
少しずつ調教してはいるが、いい加減それも面倒になってきた。
暫く焦点の合わない目で未来を見ていた道具が、視線を俺に固定して口を開く。

「・・・、・・・あの人とあの人と、こっちの人。それから、あの子」

示された4人の病人。
ああご愁傷様と、そんな感想を抱きながら口の端を持ち上げた。

――――まずは、ガキからか。

交渉相手はもちろん親。
少し周りを見れば母親が見つかったので、使い終えた道具をその場に置いて近寄っていく。
逃げるなとは、言わない。
それこそアレを買ってから今までに掛けて、「逃げられない」と調教してある。

「・・・あの、済みません。失礼ですが、あの子のお母さんですか?」

表情は「哀れみ」。
知らない人間に警戒する母親に、数秒「逡巡」を見せ次に「真摯」な目を向ける。
この程度の偽装で少しは警戒が薄れるのだから、本当に笑いが止まらない。

「あの子、あまり長くありませんね?実は私も昔重い病で、それを思い出して」
「っ・・・。そう、ですか。あの、ご用件は」
「あの子を助けたいと、思いました」
「・・・・・・冷やかしなら、帰ってください」
「いいえ、違います。私も重い病だったと言いましたよね。一度は死に掛けたくらいだったんです。でも、今は健康です」
「・・・・・・・・・・・おめでとう御座います」
「どうしてだと思います?」
「・・・・あの」
「実は私、“どんな病も治せる薬”、持ってるんです」
「!」

藁にも縋るとはこのことだろう。
愚かしいことだ。
そんなにガキを大切にしても、何の得もないのに。

「信じられないかもしれませんが・・・騙されたと思って、使ってあげてください」
「・・・下さるんですか?」
「ええ。ああただ、一応秘密なもので、その旨をサインして欲しいんですが」
「・・・・・・・・・・・それだけで、いいんですか」
「私があの子を助けたいだけですから」

俺が欲しいのはそのサイン。
なくてもどうとでもなるが、あれば格段に便利な証書。

「真摯」と「哀れみ」と下手の態度に、「それくらい」と安易に手を出す。
本当に、どいつもこいつも面白いくらい、いい反応だ。

「―――――有難う御座います。助かりました」

さぁコレで、あの死体は俺の物。

ああ、まだ生きてたか。

「早く治してあげてくださいね」なんて言い残してその場を去る。
もちろん、置いておいた道具はちゃんと回収した。
俺と母親のやりとりを聞いていたらしい道具が、訝しげに呟く。

「・・・・・・・どんな病も治せる薬・・・・?」

薄く、笑う。

嘘ではない。
少なくとも、俺にとっては。

「死ねばどんな病気も進行しないだろう?」

薬を使っても使わなくても、どうせすぐ死ぬ。
欲しかったのは、その後その死体をどう扱っても構わないと偽装するための、直筆サイン入りの紙。
ただ焼くんじゃ勿体無いから、俺が金に換えてやる。

「・・・・どこが慈善事業」
「リサイクルってのは、立派な慈善事業だろう?」

唾棄するように吐き出す台詞に、肩をすくめた。

どうせ死ぬやつを使ってるだけ、優しいと思うがな。









//15歳

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静寂の中の音
ぴちゃん。

それは規則的な音。
それは継続的な音。

暗闇の中で、静寂の中で、その音だけが耳に響く。

視界が利かないのはキツく縛られた目隠しの所為。
それしか音がないのは、此処がぼくともう一人以外誰も居ない密室な所為。

ぴちゃん、ぴちゃん、と。

それは水が立てる音。

それは、液体が液体の中に落ちて、起こる音。

視界が真っ暗でも。
ぼくには、その部屋の映像が視えた。
1秒先のその場所の未来の画が、視えていた。

ぴちゃん、ぴちゃん、と。






ぼくではないもう一人の人の手首から、赤い液体が雫となって落ちる様が、視えていた。






そしてそれが。

途切れる、瞬間も。

動脈を切った手首から流れる血が、途切れるという意味は、流石にわかる。

つまり、この人は。
ぼくと同じ密室に閉じ込められて、数刻前に手首を切ったその人は。

もうすぐ、死ぬのだ。









ぼくは道具に堕ちても、「生きる」ことを選び。

彼は「生きる」ことを捨てても、気高き死を選んだ。


ああ誰か、教えてください。









ねぇ。

――――――いったいどちらが、正しかったの?









//10歳
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