安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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終わってないの!?
「ぁっ・・・!」

瞳の色彩(いろ)が変わっていた。

「・・・っ、あ、ゃ・・・・・・、・・・!」

息が切れる。
いつもは自由になる予知の使用/非使用が、自分の意志と決別していた。

「も、ぉ・・・ぃやぁ・・・っ!!」

悲鳴を上げても、瞳は未来を映す。
目を閉じても、暗やみのなかに画は視えて。

映す。
写す。
移す。
遷す。

―――――止まらない。

「ま、だ・・・・・・」

未来が潰える日が来ない。
さきがなくなる時がない。
壊れない。
終わらない。

能力の長時間行使で急激に体から体力が抜けていく。
未来の情報の多さに脳が悲鳴を上げる。

目が輝き。
瞳がくるりと回る。
相眸が、軋んだ。

膝から崩折れて。
けれど目は見開いたまま。

涙が一筋、頬を流れた。

「ま、だ・・・おわって、ない・・・の!?」

足りないと言うのか。
あれだけ泣いても。
あれだけ嘆いても。
あれだけ壊れても。


あれだけ、視続けても。


喉だけが、意志に従って怨嗟の言葉を絞りだす。

苦痛と。
悲哀と。
後悔と。
未練と。
それから絶望が、声を闇色に塗り潰す。

もう。
視たく、ない――――!

「だれか・・・・・・」

必死に。
懇願する相手を、呼ぶ。
見えない相手に、手を伸ばす。

「だれか・・・ぼくごと、で、いいから」

どうか、この悪夢を終わらせて。










//21歳?(多分
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世間とのズレ
「・・・・・・・・え」

目を、瞬いた。

「・・・・・・・・そうなの?」

それは本気で真剣な、心の底からの、言葉だった。

何気ない会話だった。
世間話程度の、特に意味もない。
けれどその最中に、不動花梨は自分の常識とは違ったことを、聞いた。

「・・・・・もう7年も前よ?」
「本好きには世間知らずと言われても仕方ないぞ」

7年前。
そんなに前のことだった。
かの人は、死んだらしい。

「そっか・・・・・・・」

そうなんだ。

遠く、視線を投げる。
哀しいが、涙を流すほどの出来事ではない。
知人ではないけれど知っていた人が、死んでいたという、ただそれだけ。
淋しいとは、思う。
もう。

「じゃあもう、新作は読めないんだね」

軽く息を吐く。
哀しい、淋しい。それ以上に、思ったことは。

―――――残念。

そんな、思考。

幼い子供なりに、好きだった作家だった。
童話作家。知らない人の方が多いかもしれない。
けれど知る人ぞ知る、というか、根強いファンが多いひとだった。

「私も好きだったけれどね」
「ふむ、まぁ、中々不思議な空気を作る話を書く人だったな」

馴染みの古書喫茶に集った、客同士の会話。
何故その作家の話になったかも、よく覚えていない。
著名人の死だったから、ニュースでも軽く話題になったらしい。
すぐに次の話題に流れてしまうほどの、小さなニュース。
けれど知る人にはちゃんと残る、報せ。

7年前。
知れるはずもない、事象。

不動花梨は、軽く、苦笑した。

「ズレてるなぁ・・・・」

知らないことは、あとどれくらい、あるのだろうか。

戻らない歳月を想って、彼女の苦笑は、数秒の憂いへと、変わった。









//21歳
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土の下
夢を見た。
ぼくは丸い月の下、冷たい土に座って必死に土を掘っていた。
爪は剥がれ、土に汚れた指からは血が滲んでいた。
それでもぼくは泣きながら、ずっと、幾つも幾つも穴を掘った。

目が覚めたら、頬に幾つも涙の後が残っていた。

あれはどこだろう。
目覚めの、朦朧とした意識で考える。
冷たい光景だった。
木も何も生えていない、荒涼とした、風景。
生々しい土の感覚が、手に残っているような気さえ、する。

ぼくは何かを言っていたような気もする。
けれどただただ泣いていただけのような気もする。

土の下。
埋まっている、可能性が、あるもの。

何もない風景にたった一つ立っていた大きな十字架が、脳裏に鮮やかに焼きついていた。

埋めようとしていたのか。
掘り出そうとしていたのか。

あれはただの夢だろうか。
それとも未来の光景だろうか。
それとも、ぼくの中にある、風景なのだろうか。

穴を掘る。
穴を、掘る。
幾つも幾つも、穴を。
何かに憑かれたように、ただただ、土を掘る。

それはきっと。

「・・・・起きろ。仕事だ」

ベッドの上でぼくが涙を流していても、彼は何も言わない。
言うわけがない。
生きていれば、否、予知ができれば、それ以外に興味はない。
ぼくは黙って起き上がって、ただこくりと頷いた。

頭の中に、あの風景は消えない。
掘った土の、冷たい感触も。

きっとあの、土の下には。

「行くぞ」
「・・・・はい」

ぼくが今まで犠牲にしてきた人たちの、屍が埋められているのだろう。









//15歳
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彼が「王」なら。
裏の世界に存在する彼の組織が「国」で。
そして此処が、「都」。

ぺたぺたと、裸足で薄暗い廊下を歩く。
ぼくが一日の大半を過ごす部屋のあるこのフロアは、あまり人の出入りがない。
此処は特別区。ぼくは機密。
十字架か錘でしかないその肩書きによって、ぼくはこの都で守られている。
此処は恐ろしい場所。
秩序と平穏をどこかへ置いてきた、混沌の都。
法も常識も此処では通用しない。
ただ浸透されているのは、彼の意思。
完全なる、絶対王政。

「俺の命令に従えないモノは、要らない」

キッパリと、はっきりと。
彼は自分が「ボス」になったその瞬間に、言った。

「無能なモノも要らない。要るのは使えるモノだけだ」

そして同時に、告げる。

どんなに気持ち悪くても。
どんなに目障りに思っても。
どんなに、痛めつけたく思っても。

ぼくの能力を失うかもしれない可能性のあることは、するなと。

「コイツは今一番使える道具だ。復讐でも気晴らしでも、コイツに何かしたいなら―――――」

ぽんと、ぼくの頭に、手を置いて。

笑ってた。

「コイツ以上に使えるモノになれ」

ぼくはその言葉によりこの都で守られている。
「教育」により傷つけられることはあっても、身勝手な暴行は受けたりしない。
大事にする必要はないが。
壊しては意味が無い。

殺したいと正面から言われても。
死にたいのかと脅されても。

ぼくは、それができないことを、知っている。

だから無防備に裸足で歩いていられる。
ぼくの世界はこの廊下と、与えられた部屋だけ。
廊下からは、月が、見えるのだ。

小さく四角く切り取られた黒い空に浮かぶ、月。

部屋からは出てもいいと言われている。
けれど自分の部屋以外入るなとも、言われている。
階段やエレベーターを一人で使うことはできない。

ぺたぺたと歩いていた足を、止める。

窓を、見上げた。

この都は眠らない。
夜はこれから。
動きが増えるのも、これから。
闇が蠢く時間。

こんなにたくさんの、人が居るのに。

月を見上げるのは、ぼく一人。

御免ねと、そんなことを、思った。

折角、綺麗に光っているのにね。









//15歳
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旅行の計画
旅行の計画がこんなに楽しいものだとは、知らなかった。
ああ、違う。多分、知っていたけど、忘れていた。

「あの、これも持って行っていいかな?」

もしかしたら使うかも。
なんて言ったら、少し笑われた。
そんなに長い旅行じゃない。必要なものだけ持って行けばいいと、そんな風に言われる。
あれもこれもと詰め込んだら、重くなってしまう、と。

それはそうだと思い直して、また鞄の中身を考える。
夢中になって考えていたら傍にいたはずの姿がなくなっていて、我に帰って反省した。
あんまりはしゃいでいたから、呆れられてしまったかもしれない。
今度から気をつけようと苦笑して、座っていた場所から立ち上がる。

そのタイミングで、肩に軽いショールを掛けられた。

振り返れば、そこには探しに行こうと思っていた姿。

軽く瞬く。
ショールは軽いけど、あるととても暖かかった。

「――――・・・ありがとう」

嬉しくなって、微笑んで。

こんなに旅行が楽しみなのは、一緒に行く人がこの人だからというのが大きいのだろうと、そんな風に、思った。









//26歳?(21歳以降)
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