安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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彼が「王」なら。
裏の世界に存在する彼の組織が「国」で。
そして此処が、「都」。

ぺたぺたと、裸足で薄暗い廊下を歩く。
ぼくが一日の大半を過ごす部屋のあるこのフロアは、あまり人の出入りがない。
此処は特別区。ぼくは機密。
十字架か錘でしかないその肩書きによって、ぼくはこの都で守られている。
此処は恐ろしい場所。
秩序と平穏をどこかへ置いてきた、混沌の都。
法も常識も此処では通用しない。
ただ浸透されているのは、彼の意思。
完全なる、絶対王政。

「俺の命令に従えないモノは、要らない」

キッパリと、はっきりと。
彼は自分が「ボス」になったその瞬間に、言った。

「無能なモノも要らない。要るのは使えるモノだけだ」

そして同時に、告げる。

どんなに気持ち悪くても。
どんなに目障りに思っても。
どんなに、痛めつけたく思っても。

ぼくの能力を失うかもしれない可能性のあることは、するなと。

「コイツは今一番使える道具だ。復讐でも気晴らしでも、コイツに何かしたいなら―――――」

ぽんと、ぼくの頭に、手を置いて。

笑ってた。

「コイツ以上に使えるモノになれ」

ぼくはその言葉によりこの都で守られている。
「教育」により傷つけられることはあっても、身勝手な暴行は受けたりしない。
大事にする必要はないが。
壊しては意味が無い。

殺したいと正面から言われても。
死にたいのかと脅されても。

ぼくは、それができないことを、知っている。

だから無防備に裸足で歩いていられる。
ぼくの世界はこの廊下と、与えられた部屋だけ。
廊下からは、月が、見えるのだ。

小さく四角く切り取られた黒い空に浮かぶ、月。

部屋からは出てもいいと言われている。
けれど自分の部屋以外入るなとも、言われている。
階段やエレベーターを一人で使うことはできない。

ぺたぺたと歩いていた足を、止める。

窓を、見上げた。

この都は眠らない。
夜はこれから。
動きが増えるのも、これから。
闇が蠢く時間。

こんなにたくさんの、人が居るのに。

月を見上げるのは、ぼく一人。

御免ねと、そんなことを、思った。

折角、綺麗に光っているのにね。









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