安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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お祭り騒ぎ
「だから、別に話しててもいいから、此処じゃないところでっ!」
「おねーさんが遊んでくれるなら移動してもいいぜー?」
「きゃははっ、それいいねー。でもちょっと一人じゃ大変じゃね?」
「いいんだよ、な?おねーさん」

特に何があるわけでもないのに、お祭り騒ぎをしている若者たち。
日本の繁華街では、割とよく見られる光景である。
人の迷惑も考えないお祭り騒ぎの中心に、一人の女性が立っていた。
真剣なその女性に対して、若者たちはどこまでも軽く笑う。
揶揄するように掛けられるのは品性の薄い実のない言葉。
女性の肩に手を伸ばして、にやにやと締まりのない表情を作った。
肩に乗せられた手を払いのけて、女性はまた声を荒げた。

「だからっ・・・!!」

先ほどからのやり取りは、平行線を辿っている。

女性は彼らにこの場所から動くようにいい、若者たちは相手にせずにそれをからかう。
何度女性が移動するように訴えても、それが続いていた。

「だから、此処は危ないんだってっ!」

お祭り騒ぎは止まらない。

先ほど手を退けられた一人が、今度は強引に女性の腰を抱く。

「っ、きゃ!?ちょっ、離して!いい加減話を聞いてってば!」
「此処は危ないんだよねー?わかったわかった」
「笑い事じゃ・・・・!」

彼女が真剣になればなるほど、喧騒は大きくなる。
お祭り騒ぎは加速し、彼女の意思に反した方向へ突き進む。

そしてそのお祭り騒ぎは、突然悲鳴と狂騒に取って代わる。

係わり合いになりたくない、とばかりに遠巻きに通り過ぎていた通行人の中から、声が、響いた。

「危ないっ!」

その声が発された時には、もう、遅い。

女性を取り囲んでいた若者たちの半分が、アクセルとブレーキを踏み間違えたトラックに、組み敷かれ地に伏せる。
女性も無傷では居られずに、建物に突っ込んだトラックが作り出したガラスの破片で無数の傷を作った。
けれど若者たちに囲まれていたために、それはさほど大きな傷ではなく。
仲間を置いて走り去る残り半数には目もくれず、女性は地に伏せた若者たちに駆け寄る。

唇を噛み締めて、呆然としている群集に呼びかけた。

「救急車をっ!」

間に合わなかった――――・・・。

彼女はまた、後悔を一つ募らせる。










//21歳
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本当は、違うんだけど
――――――悔いはない。

大丈夫、そう言える。
緊張も動揺も全て心に押し込めて、顔を上げて歩き出す。

死刑台に上るような気分で、目的地に足を進めた。

これからぼくがしようとしていることは、完全な自殺行為。
自棄になったわけでも自殺願望があるわけでもないけど、ぼくはその行為を止めはしない。
ぼくはもう、決めたから。

多分ぼくは消されるだろう。
殺されるのか消されるのかは、わからないけど。
明日まで「ぼく」が生きている確率は、限りなく低い。

「花梨」

促されて、口を、開く。

「・・・・・・この後、人払いをして何かの仕事に取り掛かる。接触するなら今」

本当は、違うんだけど。
故意に嘘を、吐く。

――――さぁ。

もう、後には戻れない。









//22歳?(22歳以降)
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曖昧な記憶
記憶力はいい方だ。
特に予知の記憶は強い。忘れ辛いと言ったほうが正確かもしれない。
けれど、幾つか妙に曖昧な記憶がある。
何故曖昧なのか。その理由はわかっている。
けれど打開策は、ない。

「聞こえるか、花梨」

こくりと、首だけで頷く。
意識しての動きではない。反射のような、頷き。
思考は混濁している。
自分が何を言っているのか、何をしているのか、何も把握していない。

男が白衣のスタッフに合図して、スタッフは無言でぼくの腕から注射針を抜いた。
注射器の中身は、ぼくの血液に混ざってもうない。
頭がぼおっとして、現実と夢の区別が曖昧な状態。
故意にその状態を作り出した、薬。

これは実験だった。

「俺の側近を知ってるな?」

ぼくはまた頷く。
白衣のスタッフは、やはり黙って部屋を出て行った。

「アイツの5分後の未来を言え」
「・・・・たばこ・・・買う」
「銘柄は?」
「・・・マルボロ。・・・・と・・・青い・・・マイルドセブン」

そして五分後、またスタッフが現れて、男に何かを耳打ちする。
実験結果を聞いて、男はぼくに目を向けて笑った。
くつくつと、楽しそうに、満足げに。
ぼくの頭を、軽く撫でる。
普段そんなことをされたらぼくは絶対に拒否反応を起こすけど、今は何も感じない。

「お前は本当に使える『いい子』だよ、花梨」

焦点の合わない目は、何も映さず。
首振り人形のように、ただ言われた言葉にだけ反応する。

それは道具として、理想の姿。

この実験は嫌いだった。
これはぼくの保障も未来も夢も覆す、恐ろしい実験。

ぼくの意識を薬で奪っても、予知を引き出せるかどうかの、実験。

失敗が続いていた実験は、今回成功した。
どの程度の自我レベルなら予知が成功するか、そのラインが、わかってしまった。
もちろんぼくは、何度目かの実験結果はすべて、よく知らない。
自分の言った言葉も、行った予知も、覚えていないから。
合っていたかいないかも、わからない。

ただ、わかるのは。

目が覚めた後曖昧な記憶の空白の時間があることと、それ以降実験が少なくなったということだけ。

ずきりと、頭が痛む。

腕にある注射の痕が、忌まわしかった。

ぼくは役に立つ。
だから、役に立っているうちは命の補償をされている。けれど。

役に立つのは「ぼく」ではなく、ぼくの持つ「予知」。

このままでは、いつか。

ぼくは、あの男に消されるだろう。

「起きたか、花梨」
「・・・・何したの」
「知りたいか?」
「・・・・・・・・・いい」
「安心しろ、コレは教えない」
「・・・・・・・・・・・・」






――――それでも、打開策は、ない。









//18歳
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トラブル
俺は秩序とかルールとかいう面倒なものが嫌で、不良からヤクザになった。
ヤクザはヤクザで色々と掟があって、結局は日本人かと嫌気がさし、次はマフィアに。
流石にマフィアはやることがデカイと思ったが、結局ルールはルールとして存在していた。
集団とはそんなものらしい。
まぁいい。
裏の世界に居れば、少なくとも秩序は壊せる。

そして今回俺が命じられたのは、この会社で「トラブル」を起こすこと。
まぁ要は、ビジネステロだ。
手広くやってるよな、ウチの組・・・っと、組じゃねぇんだ。まぁいいや。
そしてそのために、俺に貸し与えられたモノがある。
失敗は許されないと、ボスに近いと噂される日本人の「兄貴」から言われた。
つまりは結構大事なミッションってこと。
で、だからコレを貸してくれた。
難しいことはよくわからないが、ビジネスビルなんて秩序の塊みたいなとこ、壊せるのは結構楽しみ。

・・・・でもどうやって使えばいいのコレ。
未来を読むってホントかよおい。

隣に居るのは小さな子供。

俺がちらりと目を向けると、どこかを見上げていた子供は不意に口を開いた。

「・・・・10秒後、あの角をターゲットが通過」

ホントかよ。

信じられるわけがない。
未来だって未来。どこのマンガだよ。
兄貴ー。コレを使えって本気?
とかって考えて、10秒はすぐで。

「・・・・・・・・うわマジ来た」

酷い冗談だ。

俺はあのターゲットにぶつかって鞄を落とさせ、同じ種類の鞄とすり替える。
その鞄の中には、トラブルの種。

本物の機密と若干だけ違う、契約書。

「1秒後、同僚と挨拶を交わす」

俺は歩き出す。
今度の声は、耳にした小型のスピーカーから聞こえた。

「2秒後声を掛けられて、振り返る。そこがチャンス」

思わず、思った。

―――――気持ち悪ぃ。

何だよコレ。
何だよ、コレ。

どんと肩に衝撃があって、鞄が落ちて。
ちゃんとすり替えて、それでも声は続く。

「10秒後搬入のトラックが通るから、それに隠れてターゲットの視界から消えて。後は合流場所へ」

思わずカウント。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・・0。
大きなトラックが、直ぐ傍を、通った。

次に身体を襲ったのは、得体の知れない恐怖だった。

アレは、なんだ。

ありえねぇ。こんなの、有り得ない。

合流予定地で待っていた小さな姿が、俺を見上げる。
俺の顔に何を見たのか、首を傾げた。

「どうしたの?」

ああ、うん。
わかった。
コレは、モノだ。
道具だ。
使える、便利なモノ。

こんな気持ち悪いバケモノ、人間なわけがない。

「別に、どうも?」

俺は今日、ひとつ利口になった。









//12歳
コメント(0)トラックバック(0)10〜15歳
 


秋、と言えば
散る紅葉を追いかける子供たちを見た。
民家の軒先にある年代モノの柿の樹に、たわわに実が生っているのを見た。
新米の収穫に精を出す、農家の夫婦を見た。
差し出した指先に止まる、赤とんぼを見た。

秋には、たくさんのものが実を結び、色を変え、鮮やかに命が充満する。

それは春とは逆の光景。
春は起床。
秋は支度。

自身を未来へと繋ぐ、実りのとき。

秋は好きだ。
果実も種も紅葉も、夕日もとんぼも秋桜も。
春からそれぞれ蓄えた命を何らかの形で表して、静かに眠る直前の。

秋は世界の祭りの季節。

競い合う。
自慢しあう。
こっちを見てこっちを見てと、自然の誰もが力を振り絞り、絢爛に舞う。

秋は、好きだ。

赤い色。
黄色い色。
茶色、ベージュ、オフホワイト。

暖色で彩られた世界は何処を見ても安心できて、惜しみなく主張される命はどれも眩しくて。

愛しくて、切ない。

同じように絢爛でも、春ではない。
同じように命で溢れていても、春ではない。
これは支度。
これは、最後の灯火。

白い冬に向かう前の、豪華な祝祭。









//21歳
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