安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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トラブル
俺は秩序とかルールとかいう面倒なものが嫌で、不良からヤクザになった。
ヤクザはヤクザで色々と掟があって、結局は日本人かと嫌気がさし、次はマフィアに。
流石にマフィアはやることがデカイと思ったが、結局ルールはルールとして存在していた。
集団とはそんなものらしい。
まぁいい。
裏の世界に居れば、少なくとも秩序は壊せる。

そして今回俺が命じられたのは、この会社で「トラブル」を起こすこと。
まぁ要は、ビジネステロだ。
手広くやってるよな、ウチの組・・・っと、組じゃねぇんだ。まぁいいや。
そしてそのために、俺に貸し与えられたモノがある。
失敗は許されないと、ボスに近いと噂される日本人の「兄貴」から言われた。
つまりは結構大事なミッションってこと。
で、だからコレを貸してくれた。
難しいことはよくわからないが、ビジネスビルなんて秩序の塊みたいなとこ、壊せるのは結構楽しみ。

・・・・でもどうやって使えばいいのコレ。
未来を読むってホントかよおい。

隣に居るのは小さな子供。

俺がちらりと目を向けると、どこかを見上げていた子供は不意に口を開いた。

「・・・・10秒後、あの角をターゲットが通過」

ホントかよ。

信じられるわけがない。
未来だって未来。どこのマンガだよ。
兄貴ー。コレを使えって本気?
とかって考えて、10秒はすぐで。

「・・・・・・・・うわマジ来た」

酷い冗談だ。

俺はあのターゲットにぶつかって鞄を落とさせ、同じ種類の鞄とすり替える。
その鞄の中には、トラブルの種。

本物の機密と若干だけ違う、契約書。

「1秒後、同僚と挨拶を交わす」

俺は歩き出す。
今度の声は、耳にした小型のスピーカーから聞こえた。

「2秒後声を掛けられて、振り返る。そこがチャンス」

思わず、思った。

―――――気持ち悪ぃ。

何だよコレ。
何だよ、コレ。

どんと肩に衝撃があって、鞄が落ちて。
ちゃんとすり替えて、それでも声は続く。

「10秒後搬入のトラックが通るから、それに隠れてターゲットの視界から消えて。後は合流場所へ」

思わずカウント。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・・0。
大きなトラックが、直ぐ傍を、通った。

次に身体を襲ったのは、得体の知れない恐怖だった。

アレは、なんだ。

ありえねぇ。こんなの、有り得ない。

合流予定地で待っていた小さな姿が、俺を見上げる。
俺の顔に何を見たのか、首を傾げた。

「どうしたの?」

ああ、うん。
わかった。
コレは、モノだ。
道具だ。
使える、便利なモノ。

こんな気持ち悪いバケモノ、人間なわけがない。

「別に、どうも?」

俺は今日、ひとつ利口になった。









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