育ちが知れる |
2008年4月21日 19時21分
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「ほらあの子、・・・、だから・・・ねぇ」
こそこそと交わされるやりとり。
ぼくはいい。
別に、本当のことだから。
でも、この子は。
「こんにちは」
噂話の主役だと知ってか知らずか、ぼくの手をぎゅっと握って、幼い息子がにこりと笑う。
二人の主婦は虚を突かれたような顔になり、それからちらりとぼくを見て罰が悪そうに立ち去った。
この子は、こんなにいい子なのに。
ぼくの所為で。
つい、顔が曇る。
周囲を見ながら楽しそうに歩いていた息子が、ぼくを見上げて足を止めた。
「大丈夫だよ、お母さん」
にこっと、花が咲いたように、笑う。
「普通にちゃんとしてれば、みんなわかってくれるから。全然、大丈夫だよ?」
『親があれだから、どうせ子供も・・・・・』
『育ちが知れるって・・・』
『匠くんとは仲良くしちゃダメよ』
聞こえる言葉。
聞かされる、言葉。
「占い師」なんていう職業と、父親の不在が、噂話に拍車を掛ける。
尾鰭が生え背鰭が生え、生きもののようにびちびちと跳ね回る。
それはまるで、見えない蜘蛛の糸のようにぼくを縛った。
君は強いね。
称賛の気持ちが沸いて、微笑んだ。
丁度手の置きやすい位置にある頭を、優しく撫でる。
「うん。そうだね。ごめん、匠。帰ろうか」
繋いだ手をぶらぶらと揺らしながら、また歩き始める。
ぼくが笑ったことに安心して、息子はまたきょろきょろと周囲に関心を移した。
ふと。
視えてしまった、未来を思う。
ああぼくは。
後どれくらい、君と一緒に居れるんだろう。
//25歳・・・くらい?
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