たまには寄り道も |
2007年12月5日 22時33分
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たまには寄り道もいいよな、って。
悪戯するときみたいに二人で笑って、いつもは通らない道を通る。
学校帰りの寄り道はあまりしない。
話の流れで皆で、と言うときは乗るけど、二人で帰るときは大体まっすぐ帰る。
だってあんまり遅いと母さんが心配するし、俺たちは家が好きだ。
双子の俺たちはもう近所では有名で慣れたもので、並んで歩いていても驚く人はあまりいない。
たまにこの辺りの人じゃない人が、振り返ったりするくらいだ。
振り返った人は、女の人で。
普通なら振り返って暫く見ていたとしてもそれで終わりなのに、何故かその人はそれで終らなかった。
声を、掛けられる。
「あの、君たち」
俺たちは立ち止まって、顔を見合わせて首を傾げる。
知り合いか?とお互い聞きあって、両方が首を振った。
誰だろう、と、思う。
知らない女の人は少し戸惑った表情をした後、考えながら口を開く。
「・・・・・・寄り道?」
俺たちはまた、顔を見合わせた。
この辺の人じゃない。
・・・・のに、なんで、知ってるんだろう?
隣の片割れの顔に少し警戒心が混ざる。
恐らく俺の顔も、同じだろう。
女の人はちょっと「しまった」というような困った顔をして、それからまた言葉を紡いだ。
「寄り道は、止めないんだけど・・・・この道は、左に曲がらない方がいいよ」
俺たちは、三度顔を見合わせて。
片割れが、口を開いた。
「どうして?」
女の人はやはり困ったような顔で、「危ないから」という。
よくわからない。
でも。
別に悪い人ではないように、思えた。
「・・・・どうする?陽」
「まぁ、別に左に曲がる必要はないよな?」
「寄り道だしな」
「・・・・・右に曲がる?」
「そうするか」
この会話に、女の人はほっと息を吐く。
それから「いきなり御免ね」と言って、踵を返した。
その後姿を見送って、ちょっと眉を寄せる。
ふと見れば隣も同じように考え込んでいて。
やはり俺の表情に気付いて、視線を宙に投げた。
元の通りに、歩き出す。
「・・・・なぁ、陽」
「んー・・・ねぇ、いち」
問いかけは、同時。
「「さっきの人、誰かに似てた気がしない?」」
誰だっけ。
その問いは、家に帰って父さんの部屋の写真を見て、ようやく答えになる。
父さんの親友だったという人に、女の人は酷く似ていた。
//21歳
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