安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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たまには寄り道も
たまには寄り道もいいよな、って。
悪戯するときみたいに二人で笑って、いつもは通らない道を通る。

学校帰りの寄り道はあまりしない。
話の流れで皆で、と言うときは乗るけど、二人で帰るときは大体まっすぐ帰る。
だってあんまり遅いと母さんが心配するし、俺たちは家が好きだ。

双子の俺たちはもう近所では有名で慣れたもので、並んで歩いていても驚く人はあまりいない。
たまにこの辺りの人じゃない人が、振り返ったりするくらいだ。

振り返った人は、女の人で。
普通なら振り返って暫く見ていたとしてもそれで終わりなのに、何故かその人はそれで終らなかった。
声を、掛けられる。

「あの、君たち」

俺たちは立ち止まって、顔を見合わせて首を傾げる。
知り合いか?とお互い聞きあって、両方が首を振った。
誰だろう、と、思う。
知らない女の人は少し戸惑った表情をした後、考えながら口を開く。

「・・・・・・寄り道?」

俺たちはまた、顔を見合わせた。

この辺の人じゃない。
・・・・のに、なんで、知ってるんだろう?
隣の片割れの顔に少し警戒心が混ざる。
恐らく俺の顔も、同じだろう。
女の人はちょっと「しまった」というような困った顔をして、それからまた言葉を紡いだ。

「寄り道は、止めないんだけど・・・・この道は、左に曲がらない方がいいよ」

俺たちは、三度顔を見合わせて。
片割れが、口を開いた。

「どうして?」

女の人はやはり困ったような顔で、「危ないから」という。
よくわからない。
でも。
別に悪い人ではないように、思えた。

「・・・・どうする?陽」
「まぁ、別に左に曲がる必要はないよな?」
「寄り道だしな」
「・・・・・右に曲がる?」
「そうするか」

この会話に、女の人はほっと息を吐く。
それから「いきなり御免ね」と言って、踵を返した。
その後姿を見送って、ちょっと眉を寄せる。
ふと見れば隣も同じように考え込んでいて。
やはり俺の表情に気付いて、視線を宙に投げた。
元の通りに、歩き出す。

「・・・・なぁ、陽」
「んー・・・ねぇ、いち」

問いかけは、同時。

「「さっきの人、誰かに似てた気がしない?」」

誰だっけ。
その問いは、家に帰って父さんの部屋の写真を見て、ようやく答えになる。
父さんの親友だったという人に、女の人は酷く似ていた。









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