冷たい |
2007年11月13日 23時12分
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ぼくはその日、生きているということはとても温かいということなのだと、実感した。
血の通った手も、腕も、頬も。
触れればほっと息が漏れるくらい、温かい。
それが当然だと思っていた。
それ以外の温度なんて、知らなかったから。
そっと、もう一度、白い滑らかな頬に触れる。
目を、伏せた。
悲しく、なる。
けれど、涙は出ない。
現実が、酷く遠かった。
「――――――――・・・・つめたい・・・・」
どうしてだろう?
答えは簡単だ。
彼は、死んでしまったから。
もう生きて、いないから。
死ぬって何だろう。
生きているって、何。
動くこと?
話すこと?
笑うこと?
どれも当たりで、どれもハズレ。
死ぬって、冷たくなること。
生きているって、温かいこと。
ひやりとした感覚が指先から身体の芯まで伝わって、ぱっと手を頬から離した。
ああ。
ああ、ああ、ああ。
そうか。
この人は、死んでしまったのだ。
―――――――――ぼくの所為で。
逃げようと。
ぼくに言った、人。
「―――――――――・・・っ!!」
突然現実が戻ってきて、ぼくは悲鳴のような慟哭をあげる。
そして思考は暗転した。
ああ。
ああ、ああ、ああ、ああ。
優しさを与えてくれたのに、ぼくは悲劇しか返せない。
//12歳
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