友達甲斐のない |
2007年10月30日 17時22分
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「ひーちゃん?」
目の前に居るものは、私をいつもそう呼ぶ。
とは言っても実際に「目の前に居る」と見えるわけではなく、ただ「居る」とわかるだけだが。
この男が、私にはよく解らない。
「・・・・いつも思うが、何故私を「ひーちゃん」と呼ぶ?」
「え、だって聖でしょ?「名前」」
「人間だった時の、な」
「だって今の名前長いんだもん。短くていいじゃん、「ひーちゃん」」
「お前は変な神だな」
「ほら俺若いから」
「そうか」
目隠しに覆われて見えない目。
私は少し、異端だ。
あまり好んで関わろうとするものはいない。
大方「何を考えているのかわからない」とでも思われているのだろう。
その私に好んで近寄ってくるこの男。
私よりよほど、「何を考えているのかわからない」。
私はただ、あの子が気に入ったから、気紛れに少し贈り物をしただけだ。
目隠しの中で目を閉じれば、あの子が見える。
私の目を持った、人間の子供。
心を傷つけながら、今日も言われるまま未来を告げる。
瞳をあげたのは別に繰り人形にしたかったからではないのだが、人間とは予想外の生を歩む。
可哀想に、と、思う。
しかし思うだけだ。
どうせ我らは見ているだけ。世界をあるがまま管理するだけ。
崩壊させるのも、守っていくのも、人間がすることだ。
「・・・・ひーちゃんってさ・・・友達甲斐ないよね」
ふいにそんなことを言われ、目隠しの中の目を開ける。
閉じても開けても、色彩は変わらず黒い。
「まだ居たのか」
「うわ酷いよそれ」
可笑しな単語を聞いた気がして、首を傾げた。
「・・・・・・・友達?」
なんだ、それは。
問いは言葉に出さなかったが、ちゃんと伝わったらしい。
また「酷いって」という声が返ってきて、軽く眉を寄せる。
目隠しの裏での仕草だから、相手には見えないが。
「いいじゃん、俺とひーちゃん、友達」
「馬鹿なことを」
「えー?駄目?」
駄目とか、いいとか、そいうい次元の問題ではない。
「神という存在に成り果てた私には、友も親も存在しない」
そもそも「情」というものがほとんど欠落している。
それはそちらだって同じだろう?
そう、問えば。
「まぁねぇ。でもほら、人間ってよく友達がどうとか言うじゃん。ひーちゃん人間好きだし、真似してみようかなぁって」
なんて、茶化した答えが返ってきた。
やはり私は、「これ」がよくわからない。
//カミサマ
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