偽りの私 |
2007年10月25日 00時10分
|
――――意識を、切り替えろ。
素っ気無い機械音。
耳障りな甲高い、一定の。
思わずびくりと身体が揺れた。
「不動さん?」
初期設定のまま変えていない着信音。
持たされている携帯は、通話中ぼくの居場所を「本部」のモニターに表示させる。
此処で、出るわけにはいかない。
出来る限り、可能な限り、此処から。
離れなければ。
「・・・、・・ごめん、帰らないと。・・・勝手に来て勝手に帰るなんて失礼だよね・・・本当、御免」
ああ、いけない。
切れてしまえば、それもまた危険だ。
「電話には必ず出る」――――それが自由である、条件の一つ。
手短に謝罪と退出の言葉を告げて、足早にそこを出る。
段々と余裕がなくなって、仕舞いには駆け足になって一歩でも多くあの場所から離れた。
巻き込むわけには、いかない。
絶対に。
巻き込みたく、ない。
「―――――――・・・・・はい」
さぁ、切り替えろ。
感情は要らない。
余計な情報は渡せない。
これは偽りの私(ぼく)。
けれどこんなもので巻き込まなくて済むのなら、幾らでも。
「・・・・・はい。今すぐに」
幾らでも、偽ってみせる。
//21歳
|
コメント(0)|トラックバック(0)|21歳以降|
|
|