呼び声 |
2007年10月14日 01時22分
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ぼくを呼ぶ声が聞こえる。
それは聞き覚えのある声。
知っている人の声。
「花梨ちゃん」
可愛らしく笑う、女の子の、声。
「花梨ちゃん」
ぼくも名前を呼び返すけど、その声はぼくの耳には入ってこなかった。
彼女はぼくの声を聞いて、屈託なく、笑う。
そしてぼくに近寄って、笑顔のまま、一言言った。
「ねぇどうして、助けてくれなかったの?」
ぼくは。
何も、答えられない。
「花梨ちゃん――――・・・」
彼女の手がぼくの首に伸びる。
絡みつく指が、酷く鮮烈で。
ぼくは、彼女になら、殺されてもいいと、確かに思ったのだ。
例え彼女の全てが演技だったとしても。
ぼくは彼女に癒されたから、それで。
もうそれだけで、いいと、思ったのだ。
「――――――――・・・こよみ、ちゃん」
ぼくの呟いた声は、幻の少女には届かず空気に溶けた。
//18歳
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