この広い世界のどこで |
2007年9月19日 23時26分
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ぼくは自分の目で見た事のある人の未来しか視れない。
意図的でも偶然でも、直接目で見たことがなければ基本的に未来は視れない。
場所に関しては、見たことがあるだけでは駄目だ。
ぼくが居る場所の未来のみ、視れる。
それがぼくの異能。
でも、それが全てではない。
5年に一度かそれくらい。
本当に稀に、ぼくが知らない場所の、知らない人の、未来が見えることがある。
それはまったく操作できなくて、不意に浮かぶ映像。
他愛もない未来だったり悲惨なものだったり、それも様々。法則性はない。
もしかしたら、幻覚なのかもしれない。
そう思うほど、まったく見知らぬ風景が、目に映る。
それが視えたところで一体何処だかも解らないから、無用だと、マフィアは判断した。
ぼくも、そう思う。
本当に稀だし、どうにも、できない。
視える、だけ。
本当に、視えるだけだ。
この広い世界のどこでそれが起きるのか、ぼくには検討も付かない。
本当に起きるのか。
本当に、それは未来なのか。
本当に。
その場所は、この世界にあるのか。
どれもわからない。
ぼくは、何故かそれが視えるだけ。
そしてまた、それは不意に視界を過ぎった。
崖が。
崩れる、光景。
思わず、立ち上がる。
無意味な仕草をしたぼくを、何人かが奇異の目で見やった。
それは言ってみれば、ただの、白昼夢。
本当にそれが起こったか確かめようがないのだから、幻と大差ない。
けれど。
けれど、もし。
世界のどこかでそれが起こっていて、ぼくはそれを知っていたのに、放置しているとしたら?
身も知らぬ場所の光景が視えるのは本当に稀だから。
普段はあまり、思い出さない。
けれど視えてしまうと、暫く、囚われる。
あれはどこの。
あれは、いつの。
未来?
もし解っても、結局ぼくには何もできないのに。
思いは尽きない。
この、広い広い世界の、どこで。
―――――いつか、これが予知なのか幻なのかを確認出来る日が、来るといい。
そして、その時には。
ほんの少しだけでもいいから、何か、できればいい。
//17歳
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