電池の寿命 |
2007年9月18日 21時16分
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「あ・・・」
ぷつんと切れた光に、小さく声を零す。
電池が切れたのだと、すぐにわかった。
電池は消耗品だ。
だから、いつかは切れる。それはわかっているし、慣れている。
でも、何故か。
いつも、とても淋しい気分になる。
電池の寿命。
役に立つうちは遠慮容赦なく使われて、使えなくなると捨てられて。
そして、また新しい電池が使われる。
それはまるで。
「もう視たくない?」
鼻で笑う男の言葉を思い出す。
もうこれ以上、人を不幸にする予知をしたくないと、告げた時のことだった。
ぼくと契約を交わした男は、ぼくの首を片手で掴み、持ち上げる。
気管が圧迫されて、ひゅうと喉が鳴った。
「なぁ花梨。お前は何か勘違いしてないか?」
ぐっと、手の力は強く込められ。
反射的にその手を退けようと手が動くけど、ぼくの力如きじゃその手はびくともしない。
男は、ぼくの苦しみ方を見て、嘲笑を浮かべた。
「お前は道具だ。使えなくなるまで、黙って使われろ。意思も命もお前のもんじゃない、俺のものだ」
そこで唐突に手は離されて、ぼくはコンクリートの地面に落下する。
塞き止められていた空気が急に入り込み、咽て咳き込んだ。
生理的に涙が零れ、肩で息をする。
そのぼくを覗き込んで、彼は言った。
「使い捨てなんだよ。次そんなこと言ってみろ・・・脅しじゃなく、殺して捨てる」
そしてその夜、ぼくは自分の未来を覗き視る。
不意に過ぎった未来は、ぼくの寿命が来る日の光景。
ぼくの、力が消える、その日の。
寿命を遂げた電池を、指の腹で小さく撫でる。
有難う、と、心の中で呟いた。
その電池を。
危険物として、袋に、入れる。
ゴミ箱に。
捨てる。
いつも、淋しい、気分になる。
それはまるで、いつかのぼくの姿。
//18歳
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