答えを出して |
2007年9月9日 15時36分
|
「ねぇ、なら、教えて頂戴」
その人は。
ぼくが異能を打ち明けると、妖艶に笑ってそう言った。
「私はあと、何年生きられるのかしら」
普段と変わらない口調で、普段と変わらない笑顔で。
何でもないことのように、「死」を、口にした。
「・・・・・・どうして・・・」
「知りたいから聞いただけよ。他に理由が要るのかしら」
「だって」
だって、普通、人はそんなことは考えない。
考えないようにして、生きてる。
「余命約1から5年、なんですって」
言われたことが、一瞬理解できなかった。
この、強く、美しい人が?
死ぬ?
「でも、1から5年なんて、はっきりしないと思わない?どうせならはっきり知りたいのよ、私」
「余命何年」と言う言葉が、なんて似合わない人だろう。
・・・・・・殺しても、死なないタイプの人なのだ。
なのに。
「本当に?」
「聞いてるのは私よ?さぁ、答えを出して」
あなたは答えを見れるのでしょう?
そう続けられて、困惑に瞳が揺れた。
確かに。
確かに、ぼくは、答えを出せる。
だけど、それは。
教えるべきではないのでは、ないか?
教えてしまったら、それは認識によって不変になる。
選択が、絞られる。
「・・・・嫌」
「あら、残念だわ。折角いい人生設計ができると思ったのに」
「ぼくは、あなたに死んで欲しくないから」
「でも、6年は生きられないそうよ?医者によれば、だけれど」
「わからないよ。医者だって間違える」
「そうね」
存在が美しい人。
生きている光を持っている人。
この人が死ぬなんて、ぼくには思えない。
きっと。
「病魔の方が逃げてくかもしれないしね」
「・・・・あなたの中の私ってどんな人間なのかしら・・・?」
「えっと・・・・最強?」
「お褒めの言葉有難う」
「どういたしまして」
この先まだ、無限の選択が待っているから。
未来は、きっと変わる。
だからぼくは、答えを出さない。
//21歳
|
コメント(0)|トラックバック(0)|21歳以降|
|
|