安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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答えを出して
「ねぇ、なら、教えて頂戴」

その人は。
ぼくが異能を打ち明けると、妖艶に笑ってそう言った。


「私はあと、何年生きられるのかしら」


普段と変わらない口調で、普段と変わらない笑顔で。

何でもないことのように、「死」を、口にした。

「・・・・・・どうして・・・」
「知りたいから聞いただけよ。他に理由が要るのかしら」
「だって」

だって、普通、人はそんなことは考えない。
考えないようにして、生きてる。

「余命約1から5年、なんですって」

言われたことが、一瞬理解できなかった。

この、強く、美しい人が?

死ぬ?

「でも、1から5年なんて、はっきりしないと思わない?どうせならはっきり知りたいのよ、私」

「余命何年」と言う言葉が、なんて似合わない人だろう。
・・・・・・殺しても、死なないタイプの人なのだ。
なのに。

「本当に?」
「聞いてるのは私よ?さぁ、答えを出して」

あなたは答えを見れるのでしょう?

そう続けられて、困惑に瞳が揺れた。
確かに。
確かに、ぼくは、答えを出せる。
だけど、それは。
教えるべきではないのでは、ないか?
教えてしまったら、それは認識によって不変になる。
選択が、絞られる。

「・・・・嫌」
「あら、残念だわ。折角いい人生設計ができると思ったのに」
「ぼくは、あなたに死んで欲しくないから」
「でも、6年は生きられないそうよ?医者によれば、だけれど」
「わからないよ。医者だって間違える」
「そうね」

存在が美しい人。
生きている光を持っている人。
この人が死ぬなんて、ぼくには思えない。
きっと。

「病魔の方が逃げてくかもしれないしね」
「・・・・あなたの中の私ってどんな人間なのかしら・・・?」
「えっと・・・・最強?」
「お褒めの言葉有難う」
「どういたしまして」

この先まだ、無限の選択が待っているから。

未来は、きっと変わる。

だからぼくは、答えを出さない。










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