カーテンの向こう側 |
2007年9月5日 23時42分
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あのカーテンの向こう側に、「何か」、居る。
それはぼくを害する「何か」。
ぼくの望まない、「何か」。
何だろう。
何だろう。
恐くなって母さんの服を掴むと、母さんは訝しげにぼくを見下ろした。
「どうしたの?花梨」
「カーテンの・・・・」
「カーテン?ああ、気付いたの。大丈夫よ、花梨」
「何が居るの?」
見上げれば、母さんは笑う。
安心できるはずの笑みは、何故か恐怖を煽った。
ああまさか。
ああ、まさか。
「アレ」は今日なのか。
「母さん」
「どうしたの?花梨。今日はやけに落ち着かないのね」
「何が、居るの」
「父さんよ」
「父さんと、何」
母さんはさらりとぼくの髪を撫でる。
部屋の奥を仕切るカーテンが、窓からの風に煽られて微かに翻った。
母さんは、なんでもないことのように、言う。
「あなたの所有者になる人」
カーテンの向こう側に行ってしまえば。
もう、戻れない。
//9歳
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