安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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カーテンの向こう側
あのカーテンの向こう側に、「何か」、居る。

それはぼくを害する「何か」。
ぼくの望まない、「何か」。

何だろう。
何だろう。

恐くなって母さんの服を掴むと、母さんは訝しげにぼくを見下ろした。

「どうしたの?花梨」
「カーテンの・・・・」
「カーテン?ああ、気付いたの。大丈夫よ、花梨」
「何が居るの?」

見上げれば、母さんは笑う。
安心できるはずの笑みは、何故か恐怖を煽った。

ああまさか。
ああ、まさか。

「アレ」は今日なのか。

「母さん」
「どうしたの?花梨。今日はやけに落ち着かないのね」
「何が、居るの」
「父さんよ」
「父さんと、何」

母さんはさらりとぼくの髪を撫でる。
部屋の奥を仕切るカーテンが、窓からの風に煽られて微かに翻った。

母さんは、なんでもないことのように、言う。





「あなたの所有者になる人」





カーテンの向こう側に行ってしまえば。

もう、戻れない。









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