夏に降る雪 |
2007年8月29日 01時43分
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空から舞い落ちる白いもの。
そう言われたら何を連想するだろう。
雪?
でも今は夏だ。
それは雪ではなく。
「・・・・・・花・・・」
太い樹から舞い散る白い花弁が、絶え間なく降り注ぐ。
それが、空から降ってくるように見える。
ぼくは陶然と眺めていた白い花弁たちから目を離して、振り返って笑う。
「・・・・素敵な場所だね」
微笑めば、微笑みが帰ってくる。
ああ、それはなんて。
幸せな、光景だろう。
「―――――連れて来てくれて、ありがとう。「 」」
目を開ければ、それは黒く塗り潰されて消える、夢。
一瞬の黒の直後に、ぼくに与えられた部屋が映る。
マフィアの本部内に位置する、小さな、部屋。
扉には鍵、窓には格子。
隣には研究室、逆の隣には見張り。
施設内はそれなりに自由に歩ける。ただし、見張りつき。
ぽつりと、呟いた。
「・・・・・あれは、未来?」
本当に?
いつの?
何年後?
それとも。
「・・・・・ただの、夢?」
もうすぐ、ぼくが契約したあの男は、このマフィアのボスになる。
「ボス」に就任して約2年。裏切り者や反逆者を潰して、名実共に、正真正銘のボスに。
それはイコール、ぼくがこの部屋を出れるということ。
だから、可能では、ある。
可能ではある、未来なら。
期待しても、いいだろうか。
これからも生き続ければ、あんな日が、来るのだろうか。
何故か、涙が、一筋流れた。
ぼくは。
幸せを願って、いいの?
流れた涙は、たった一筋だけで、涙の跡だけ残して消えた。
//19歳
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