安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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夏に降る雪
空から舞い落ちる白いもの。
そう言われたら何を連想するだろう。
雪?
でも今は夏だ。
それは雪ではなく。

「・・・・・・花・・・」

太い樹から舞い散る白い花弁が、絶え間なく降り注ぐ。
それが、空から降ってくるように見える。
ぼくは陶然と眺めていた白い花弁たちから目を離して、振り返って笑う。

「・・・・素敵な場所だね」

微笑めば、微笑みが帰ってくる。

ああ、それはなんて。


幸せな、光景だろう。


「―――――連れて来てくれて、ありがとう。「 」」


目を開ければ、それは黒く塗り潰されて消える、夢。

一瞬の黒の直後に、ぼくに与えられた部屋が映る。
マフィアの本部内に位置する、小さな、部屋。
扉には鍵、窓には格子。
隣には研究室、逆の隣には見張り。
施設内はそれなりに自由に歩ける。ただし、見張りつき。

ぽつりと、呟いた。

「・・・・・あれは、未来?」

本当に?
いつの?
何年後?
それとも。

「・・・・・ただの、夢?」

もうすぐ、ぼくが契約したあの男は、このマフィアのボスになる。
「ボス」に就任して約2年。裏切り者や反逆者を潰して、名実共に、正真正銘のボスに。
それはイコール、ぼくがこの部屋を出れるということ。
だから、可能では、ある。
可能ではある、未来なら。

期待しても、いいだろうか。

これからも生き続ければ、あんな日が、来るのだろうか。

何故か、涙が、一筋流れた。

ぼくは。

幸せを願って、いいの?

流れた涙は、たった一筋だけで、涙の跡だけ残して消えた。










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