あたかも爆発したかのように |
2007年8月24日 03時16分
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視界の中で、閃光が弾けた。
いきなり白で視界が埋め尽くされて、びくりと身体が揺れる。
「まだだ」
肩を掴まれて耳元でそう囁かれ、ぼくはぎゅっと目を瞑る。
目を閉じても意思を持って切らない限り、視界は映像を映す。
今ではない未来の、映像を。
「まだ視続けろ、花梨」
それはあたかも爆発したかのように、見えた。
否、違う。
「あたかも」でも、「ように」でも、なくて。
恐い。
恐い、恐い、こわい。
――――これ以上、視たく、ない。
閃光が収まったその場所には、黒く煤焦げた地面と、飛び散った赤い水の跡、それから。
鮮やかな、鮮やか過ぎるピンク色の肉と真っ白な骨をむき出しにして倒れる、下半身。
上半身はまるで破裂した水風船のゴムのように、バラバラになって周囲に――――・・・
「・・・・・・っ・・・・ひ、ぃ、やぁあっ!」
そこでぼくは目を開けた。
集中力が切れた所為で映像がぼやける。
恐怖と嫌悪で流れた涙も、更に映像を揺らした。
首を振る。
「や、いや・・・・ぃやっ・・・!」
「・・・・花梨」
ぼくの通訳兼お目付け役を命じられた男、ぼくと契約した男、野心家の日本人は、ぼくの目を覗き込む。
底の見えない黒い目から逃れたくて顔を背けようとしたら、顎を取られて固定された。
それでも、小さく首を振る。
「ぃゃ・・・・・」
「これはビジネスだ、花梨」
びくん、と。
身体が揺れた。
これは。
ぼくの、生きる道。
たった一つの、ぼくの、生き方。
「こいつが三日後にちゃんと死ぬかどうか。知りたいのはそれだ。さっさとお前の仕事をしろ、花梨」
震える身体を押し殺して、目を、閉じる。
どうしてと、何度も何度も何度も、心の中で叫んだ。
どうして。
どうして、どうして、どうして、こんなっ・・・!
掠れた声で、未来を、告げる。
――――ああ。
知っているのに何もできないと言うのは、何て。
何て、最低の、ことだろう。
ぼくは、罪のかたまり。
//11歳
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