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一生分の運
2007年11月23日 05時57分
僕は多分あの時、一生分の運を使い果たした。
そう、思う。
だからこんなに、不幸なんだろう。
「・・・・君に会ったことは奇跡のような幸運だったよ」
微笑んだ。
確かに運が良かった。
彼女に会わなかったら、きっと僕は死んでいたから。
でもだから、その後にいいことは何もなかった。
彼女の所為で。
彼女の、所為で。
たまたま、すれ違って。
いきなり「行かないほうがいい」と真剣な目で言われ、なんだこの人と胡乱な目を向けて。
でも数十分後、彼女の言葉の真意はわかった。
彼女に呼び止められなければ、ぼくは玉突き事故に巻き込まれて死んでいた。
轢かれて血を流して、痛いし苦しい最後だっただろう。
僕が相手にしなくても彼女が食い下がってくれたおかげで、僕は間一髪巻き込まれずに済んだ。
それが幸運でなくて、なんだと言うのか。
「――――――でもだからこそ、君が憎い」
それは一生分の幸運。
使い果たして枯渇した運は、僕に不幸ばかりを連れてくる。
例えばその日のすぐ後、空き巣に入られた。
その後は、父が入院して。
彼女には振られてしまい、バイトも首になって。
こんな汚い仕事に、手を出すはめになった。
君があの時、ぼくに会った、その幸運の、所為で!
微笑みは、酷薄な笑みへと、変わる。
「ねぇ。僕にどう、償ってくれるの?」
僕は、君を許さない。
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