安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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歓喜
歓喜に沸く。
煩いほどに溢れた歓声が、酷く耳障りだった。

「我らは「時計」を手に入れた!」

歓喜を煽る、隣の声。
これもやはり、耳障りで。
架せられた首と手足の鎖が、異様に冷たかった。
密度の濃い歓声と熱狂で温度の高い、部屋。
暑く感じても可笑しくないはずなのに、汗一つかかない。
感覚が麻痺しているのか、暑いは愚か暖かいとすら思わなかった。

シークレット・コードNo,00『狂った時計』。
それがぼくに付けられた道具としての呼び名。
あのファミリーでは、大抵『時計(クロック)』とだけ呼ぶ人が多かった。
そもそも呼ばない人、「アレ」で片付けられることが一番多かったけれど、次に多かったのはこれだった。
もしくは、SC00。第一級の組織機密。
ぼくの存在は、他の組織に知られてはならない。
「未来がわかる」という情報はいい。
それがぼくだと、知られてはいけない。
それはファミリーの不利益。
ぼくが狙われることは、好ましくない。

だからぼくが「時計」だということは、ファミリー外には流出禁止。
なのに今、ぼくが他のファミリーに捕まっているという、それは。

ウラギリモノが、居る。

そういう、こと。

ああきっと、戻ったらまた何か視させられて。
そして「粛清」が、行われる。
ぼくが、引き起こす、制裁。

いまだ覚めやらない熱烈な歓喜の中で、目を、閉じる。

視えるのは歓声を上げる人たちでは、なく。





浴びる様に降る銃弾の雨と、溜まる血の赤と、ゴミのような黒い塊。





あと、30分後。
歓喜は惨劇に変わる。
ぼくに付けられた発信機を辿って、「ボス」が、来る。









//20歳
・・・過ぎた。難しかったわ「歓喜」・・・。
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