安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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可愛い我侭
可愛い我侭を叶えるために。
ぼくは魔法使いになろうと思った。

まず欲しいのは、可愛いくまのぬいぐるみ。
お店を選んで立ち寄って、一つ手に入れる。
次に求められるのは、綺麗な花。
花束か鉢植えか迷って、鈴蘭に似た小さな鉢植えを購入した。
それから要るのは、きらきらのアクセサリー。
これは小さな宝石が光る、ネックレスにしてみた。
そして、最後は。
食べきれないくらいの、御馳走。

視ていた光景を切って、少し悩んだ。

これは難しい。
少しずつ慣れては来たけど、ぼくは料理があまり上手くなくて。
沢山の御馳走なんて、用意するのは難しい。
そもそも、前もって用意できるものじゃない。
湯気が立っているから、出来立てだから、料理は美味しい。

「我侭」を聞ける時間は、明日の17時20分過ぎ。
それまでに料理を作ってくれるように、お願いしておくしかない。

間に合わなかったら魔法使いにはなれず仕舞いだけど、そこは賭けだ。
とりあえず用意できるものだけ用意して、家に帰った。
何処に置いておこうかと、少し迷う。
結局彼女では手の届かない、上の方に一つずつ隠した。

そして視た通り翌日の5時過ぎに、ぼくは聞く。

「何が欲しい?」

彼女はぼくが視たときと、同じ答えを返した。

「あのね、あのね。くまさんがほしいの!」

笑って頷いて、くまのぬいぐるみを取ってきて手渡す。

「あとね、おはな!」

少しずつ歩いていたから、花の隠してある場所はすぐだった。
やっぱり手渡すと、彼女はぱちくりと目を瞬く。

「あとは?何かある?」
「えっとね、えっと・・・きらきらもほしい!」

これは小さいからポケットに入ったので、取り出して首に掛けた。

にこりと、笑う。
彼女はぱあっと嬉しそうに笑って、宝石よりもきらきらした目をぼくに向けた。

「すごい!どうして?」

ないしょ、と、悪戯っぽく笑う。

他にはある?と、また聞いて。
そして答えと同時に、襖を開けた。

「ごちそう、たくさん!」

そこには頼んだ料理がちゃんと並んでいて、内心ほっとする。
あとでちゃんとお礼を言わなくてはと、思った。

そして御馳走の並んだ部屋を見て、彼女はまた嬉しそうに歓声を上げて。

「すごいすごい!ありがとう、おかあさん!」

そう、言った。
どうやらぼくは、無事魔法使いになれたらしい。

きみが幸せなら、ぼくは幸せなんだよと、抱き締めて言った。

生まれてきてくれて、ありがとう。









//27歳?(無事結婚できて子供出来たら)
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