安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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地図にも載っていない
日本には、「住宅地図」というものがある。
載せてもいいと許可をしたわけでもないのに、個人住宅の所在地が載っている地図。
年に一度は更新され、新しい住宅地図が発行される。
建物を建てる際に国へ届け出るそこから、情報は流れている。
だから事実上、住宅地図に載っていない建物は存在しない。

しかしそれは、「表向き」の、言い分。

法律なんて、やろうと思えば穴だらけだ。

「此処が日本での“本部”だ」

現に此処は、地図に載っていない。

どうやったかは知らない。
知りたいとも思わない。
しかし地図を見ても、この建物は存在しない。
住所もない。
手紙を出すときはさぞかし困ることだろう。

もちろん肉眼では見えるから、見掛けは普通のビジネスビル。
一歩足を踏み入れればそこは、マフィアの巣窟。
ぼくの目の前に居るこの男が「ボス」になってからファミリーには日本人が増えた。
だからか何なのか、一見して東洋系の人間が多い気がする。
構成員は大体黒いスーツ。
幹部に近い人間は、ダーク調の色合いの、個人仕立ての立派なスーツ。
どちらにせよスーツの男ばかりの、閉鎖的な社会。
此処では、何が起きても不思議じゃない。
そう。
密売も競りも殺人も、なんでもありだ。
此処は、一種の異世界。
「表」とは違う法のある、「裏」の世界。

「仕事の時は指定がなければ此処に来い。お前の指紋は入り口の指紋認証に登録してある」

ぼくは知っている。
それは、幹部と同じ扱い。
一般構成員は、中から開けてもらわなくては入れない。
刺さる視線は「特別扱い」への嫉妬からか、それとも野心からか。

つい、自嘲した。

ぼくはもう。
「この世界」から、抜けられることはない。

こんな「特権」、一度も欲しいなどと言ったことはないのに。

「―――喜べ。お前は全室フリーパスだ」

意訳すれば、定期的に、全ての部屋の未来を見ろと、そういうこと。
裏切りも工作も狙撃も、許す気はないと。
そういう、こと。

「・・・・・・・行けなくても、いいのに」

日本に作られた、地図にも載っていない「この世界」。
頭まで沈みきったぼくの身体はきっと真っ黒なのだろうと、そんなことを思った。









//21歳
また0時過ぎた・・・。
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