安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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紅葉
秋の彩りが山を染める。
出雲の山は神の住む山。秋の紅葉は神の祭り。
友達が多いとは言えなかったぼくにとって、出雲大社は居心地のいい遊び場だった。

静謐な空気が好きだった。
浮ついた観光客でさえも神妙な面持ちになる、その存在が好きだった。
囲む山々が、季節によって移り変わるのも好きだった。

境内の隅に立派な紅葉の樹があって、赤く染まった葉が落ちてくるのをよく追いかけた。
地に着く前に手に挟めたら、ぼくの勝ち。
それはぼくと紅葉の勝負。
ぼくと、秋の子供たちの、遊び。

懐かしい。
売られる前の、話。

「・・・・・此処はよく似てる」

ぼくが気が付くとこの神社に来てしまうのは、それもあるのかもしれない。
それだけが理由ではないけど。
理由の、一つ。
やはり境内の一角にあった紅葉の樹を見上げて、ふと顔を綻ばせた。

「すっかり、秋だね」

こんにちは、秋の申し子たち。
良かったら今度、久しぶりに、ぼくと遊ぼう?

返事は当然なかったけれど、ぼくは紅葉に心の中でそう語りかけた。

赤くひらひらと舞う紅葉が、見られるのはもうすぐのこと。









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