安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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少しは心配してくれた?
兄さんのお墓がわかってから、ぼくはたまにそこに足を向けるようになった。
特に用があるわけではない。
静かな墓地の一角で、お花だけ変えて、佇んでいるだけ。

けれどそれが、何故か、妙に落ち着く。

「ねぇ兄さん」

あなたは優しい人だったと、あなたの友達が言っていた。
ねぇ、兄さん。

「もしあなたが生きていたら、生きていて、妹(ぼく)が居る事を知ってたら」

聞こえはしないことはわかってる。
此処にあるのは兄さんの骨。
兄さんの、お墓。
当然、答えもない。
けれど、ぼくはよく此処で誰も居ないお墓に話しかける。

「少しは心配してくれた?」

聞く人も、答える人も、居ないけど。
何故かぼくは、とても、安心する。

何故か。

誰かが聞いてくれたように、穏やかな、気分になる。










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