安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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家が、燃えていた。
塀に囲まれた、日本家屋。
古い家。俺が15年間、住み続けていた、家。
平屋の木造家屋はいとも簡単に火を受け入れ、周囲が赤く染まる。

パチパチと爆ぜる音の中で、俺は自分の影が火に照らされて躍るのを、じっと見ていた。

口の端が、ゆっくりと持ち上がる。

「・・・・・、・・・・・・・」

床も壁も家具も畳も。
幾多の人も、全て炎が飲み込んだ。

「・・・くっ・・・は、は・・・くくっ、はははっ!!はははははっ!」


笑いが、止まらなかった。


「ざまあみろ」と、つい思う。
高らかに笑いを零しながら、手にしていたナイフを投げ捨てた。

畳が吸った赤も、ナイフにこびり付いた赤も、炎の赤に照らされて判別つかない。

目の前の骸が最期に言った言葉が、嘲笑を引き起こした原因だった。
骸は、一応血の繋がった、男。
父親という、生き物。

「何故」と。
そんなことを、言った。

何故?


「それが解らないから、お前は精々三流なんだよ、「組長」」


俺は家族(てき)の首を手土産に、此処から上へと這い上がる。

信頼できる家族も、苦労を分かち合う友人も、そんなものは無用だ。
欲しいとも思わないし、そもそも居たからどうなるものでもない。
俺が、欲しいのは。

役に立つ道具と、踏み台になる、屍。

俺の前には誰も居ないその高みまで、俺は上る。





――――使い勝手のいい、未来がわかる便利な道具を手に入れるのは、それから3年後。

小賢しいガキの形をしたその道具は、不動花梨と名乗った。










//樹閃月(いつき せんげつ)
「ボス」。
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