安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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逃げられない、逃がさない
ぼくは弱い。
だから、逃げられない。


アレは役に立つ。
だから、逃がさない。





「イツキ。「時計」をそのまま外に出す気か?」

あの賢しいガキと契約してから5ヵ月。
最初の1月は検査に費やした。両親の申告と予知の瞬間がばっちり映ったビデオでしか能力を確認していなかったから、実験と検査を繰り返し、能力値を測定した。
結果は予知確定率96%。
本物のバケモノだった。どうやら俺は運がいい。

この世は裏も表も、情報を制した者が勝つ。
未来の情報なんて、ほとんど金のなる木だ。

事実、この5ヵ月で、俺の地位は1つ上がった。

「いけないか?」

軽く笑って返す。
人を小馬鹿にした笑い顔は、もちろんわざとだ。
今日はこれから、買って初めてアレを外に出す。

「逃げたらどうする」

また、笑う。
今度は、はっきりとした嘲笑。

「逃がすと思ってんのか?」

この、俺が。
あんな役に立つ道具を、ミスして失くすと?

こいつに比べれば、あのガキの方が遥かに頭がいい。

アレは解ってる。
自分が此処から逃げられないこと。
賢いことが仇になる。
自分が弱く力のないことを知っている。
何が出来て、何が出来ないのか。
夢や希望や幻想の、御伽噺のようなバケモノの癖に、夢も希望も幻想もなく、現実的に何が出来て何が出来ないかを知っている。

だから、出来ないことは、やらない。

愚かで、やり易いことだ。
それとも未来がわかると、自然とそうなるのだろうか。
足掻かない。
挑まない。

そんなことをしたらどうなるか―――――わかるから。

本当に、愚かで、やり易い。

「・・・・花梨」
「なに」
「わかってるだろうが、一応言っとく」
「・・・・だから、なに」

腕を掴んで引き上げれば、軽い身体は簡単に持ち上がった。

「逃げようと思っても、無駄だ」

腕一本で体重を支える羽目になったガキは辛そうに顔を歪め、それでもじっとこちらを見返す。

「・・・・・・・知ってる」

ああ、これだから。

コレは愚かで賢しいガキだが、中々、愉しい。

「だろうな。それでいい。――――行くぞ」

俺はコレを使って、裏の世界をのし上がる。











//10歳
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