安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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帰る家
「もーいーかい」
「まーだだよー」

夕日が街を赤く染める時間、小さな公園。
住宅街の真ん中に位置するその公園には、子供たちの遊び声が響いていた。
しかし楽しい遊び時間はそろそろ終る時間で、一人、また一人と子供の数は減っている。

「花梨」

遊んでいた中の一人、少女が声に顔を上げる。
6歳程度の少女は、振り返って屈託なく笑った。
少女の名前を呼んだ女性は、走り寄った少女に手を伸ばす。
その手を繋いで、少女ははにかむ様にまた頬を緩めた。

「さ、帰りましょう。花梨」

女性は柔らかく笑い、そして――――・・・






「・・・・何時まで寝てる気だ、花梨」






目を開ける。
間近に映った男の顔に、眉を寄せた。

「別に、寝てないよ」
「何だ・・・長いこと目閉じて呆けてるから立ったまま寝てるのかと思ったぜ」
「ぼくはそんなに器用じゃないよ」
「ふん。何を呆けてたんだ?」
「・・・・・別に?」
「ふーん」

何処の国でも、子供の遊ぶ時間はそう変わらない。
夕暮れ時、サッカーをしていた少年たちが次々と仲間に手を振って離れていく。
「此処で待て」と言われてぼうっと立っていたら、そんな光景が見えて。
何となく、遠い昔のことを思い出した。
ただ、それだけ。

「もういい?」
「ああ。行くぞ」
「・・・・・はい」

もう帰れない。
あの頃は、幻想や夢の中にしかない。
帰る家、も。
帰れる家も。
何処にも、ない。

基本的に、この男と仕事に関係ない会話はしない。
ぼくにも彼にも、する気がない。
もう仕事は終ってぼくは部屋に「仕舞われる」だけだから、移動中に会話をする必要はなかった。
石畳を走る、子供の足音と高い笑い声が耳に入る。
「何時まで遊んでるの」と、そんな声まで聞こえて、少し微笑んだ。
微笑んだのを自覚して、ああ、と、思う。

ああ、ぼくは。

いつか、あれを、もう一度。

望んでいる。

今度は伸ばす側でいいから。
今度は伸ばす側が、いいけど。

いつか、また。
ぼくが仕事を続けて契約が成って、自由になってから。
そんな、いつかの未来に。

「帰ろう」と、手を繋いで。

「家」に、帰れれば、いいのに。













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