安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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真打ち登場!
初めて会った時、ぼくは少し嬉しかった。
買われてからずっと、同じくらいの子供には、殆ど会ってなかったから。
だから実は、ほんの少し、期待したのだ。

友達に。
なってくれるかも、知れないと。

・・・期待なんて、無駄だと教えられていたのに。

男の子を連れてきた黒服の幹部が言う。

「ディス。これが噂の“時計”だ」

男の子は、最小限の動作でぼくを一瞥して。
そして、笑う。

それはそれは、楽しそうに。

嗤う。

「ヘェ・・・へーぇ、コレが。コレがねぇ!」

反射的に、理解した。
ああ、この人は。

「ハジメマシテ、時計ちゃん。俺はディス。ファミリーネームはないからオトナシクそう呼んで?ああうん、いいねぇ、いいジャン」

あの人とは違うけど、怖い、人。

何も言えないぼくに顔を近付けて、猫のような眼を細める。

「俺はアンタが要らなくなったら棄てる役。完膚なきまでに殺し尽くしてヤるから、安心してな」

出来るだけ早く逃げたり使えなくなってくれると、とっても嬉しい。

――――――――それが、初対面。

もう10年くらいは、経つのだろうか。
その時から。
わかっていた。覚悟はしていた。

ぼくは彼に殺されるのだろう、と。

「フッフッフー。真打ち登場!って感じか?」

大人になったあの時の「男の子」は、笑う。
とてもとても、楽しそうに。

あの時と同じように猫のような眼を細めて、言った。

「待ちに待ったなぁ、フドウカリン」

さぁお楽しみの、オカタヅケだ。

――――――・・・彼は、ディス。

マフィアの世界でも名高い、腕のいい、殺し屋。










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