安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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あなたの誇りはなんですか
「貴様らに話すことなどない」

手錠と鎖で戒められ、拷問を受けて尚、そう言う人を見た。
FBIの、マフィア捜査官。
潜入捜査をしていたこの人を、「視た」のは、ぼくだった。
一般構成員は立入禁止の部屋に連れていかれて、未来を視た。
誰かが来たのが視えてしまった時には、戦慄した。
告げれば。
・・・・・・こうなることは、わかっていた。

よほど手酷く痛め付けられたのか、手当てもされず血を流す姿に、顔を歪める。
勝手に体が震えて、思わず強く両腕を掴んだ。

ごめんなさい――――。

そう言いたくなったけど、言う権利はきっとぼくにはない。

場違いなぼくに、その人は若干顔色を変える。

「・・・なんだ、この子は。まさかこんな子供に危害を加えるつもりじゃないだろうな!?」

びくり、と。
申し訳なさに、体が震えた。
ぼくは。
ぼくは、あなたに、心配してもらう資格なんて、ないのに。
時期ボスと目されている男が、ぼくの後ろでせせら笑う。
ぼくの肩に手を置いて、にやりと、楽しげに笑った。
それをどう勘違いしたのか、FBIの男の人は更に叫ぶ。
ああ、叫ぶのも、体力を削るだろうに。
ぼくのために、その人は叫ぶ。

「貴様らに誇りはないのか!?」

この人は、とても、誇り高き、人。

「・・・・・勘違いすんなよ、馬鹿が。これに危害なんて加えたらどんだけの損害だと思ってる?」

嘲笑したまま、男は言う。
そして、ぼくの名を、呼んだ。

「花梨。コイツに未来を教えてやれ」

訝しげにぼくを見る、誇り高い優しい人。
ぼくは目の前に居乍ら彼と目を合わせられずに、俯いて目を閉じた。

そして視て、絶句、する。

言葉を失ったぼくを見て、後ろの男が楽しげに、笑った。

「どうした?花梨。早くしろ」

よろりと一歩後ろに下がって、茫然と、首を振る。
駄目だ。
言ったら、告げたら、この人は。
脚を引いた体はすぐに後ろの男にぶつかって、男は平然と、また厳然と、ぼくに言葉を投げる。

「仕事だ。言え」

ぼくは。
口を、開く。

「・・・・・・・・・あなた、は・・・・・・」

この人は、こんなに、いい人、なのに。
ぼくは。
ぼくは―――――・・・・・。


「・・・ぼくを殺そうとして、この、人に、撃たれる」


この人から誇りさえも奪って、死なせてしまう。
どんなに辛いだろう。
この優しい人が、守るべき子供(ぼく)を殺そうと決意するのは。
どんなに、辛いだろう。
この誇り高き人が、自ら誇りを汚すのは。

「・・・何、を」
「おっと、馬鹿にしない方がいいぜ?コイツがウチの「最高機密」だ。予知能力は便利でな」
「・・・・!まさか、この、子供が貴様らの・・・?」
「ああ。しかし、意外と平凡だな。言い淀むからもっと面白い末路を期待したのに」

ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。

ごめんなさい。

許して、なんて。
言えるわけが、ない。

ぼくの、誇りは。
ずっと前に、粉々に壊して捨ててしまった。
今、ばくが誇ることができる信念なんて、ひとカケラすらも、存在しない。

ごめんなさい。

それでも。

それでもぼくは、生きたいのです。









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