安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で
新着アーカイブ
ゾロ目[2
(2010/11/11 12:51)
マスコット
(2008/5/1 19:04)
多けりゃ良いってものじゃない
(2008/4/30 18:51)
一生懸命
(2008/4/25 18:53)
世界を見下ろす丘
(2008/4/23 18:54)
新着コメント
新着コメントはありません
ブログ内検索
カテゴリー
最初に/設定(1)
21歳以降(70)
16〜20歳(35)
10〜15歳(29)
0〜9歳(6)
その他(18)
月別アーカイブ
2010年11月(1)
2008年05月(1)
2008年04月(12)
2008年02月(16)
2008年01月(5)
2007年12月(25)
2007年11月(25)
2007年10月(31)
2007年09月(30)
2007年08月(13)
カレンダー
2008年1月12日 22時45分
カレンダーに一つ、丸を付ける。
約二週間先の、水曜日。
歪な赤い丸だが、少女は満足そうだった。
まだ幼い。4、5歳だろうか。紺色掛かった髪を可愛らしいおかっぱにした、少女。
「花梨?」
満足気にカレンダーを見上げる少女に気付いて、誰かがその後ろ姿に声を掛ける。
声のあとに姿を表したのは、少女と同じ髪色の、大人の男性。
男性を振り返った少女の様子から察するに、恐らく彼女の父親だろう。
少女はぱっと顔を輝かせ、振り向きざま男性の足にぽふりと抱きついた。
男性は微笑んで少女を撫でて、たった今少女が書いた赤丸を目にして首を傾げる。
何の丸だろうか。
その日は別に記念日でもなんでもないし、用事も行事も約束も覚えはない。
疑問に思いながら少女を見れば、少女はいかにも得意げに、「誉めて」というようなきらきらした瞳で彼を見上げていた。
子供のすることだ。特に意味はないのかもしれない――――――・・・そう思いつつも、彼は娘にそれを訊ねる。
「何の日かな?」
そして少女は、弾んだ声でこれに答えた。
「ままがよろこぶひっ!」
ぱちくりと、目を瞬く。
やはり子供の言うことかと、微笑ましくも苦笑した。さっぱりよくわからない。
「そうか、楽しみだね」
「うん、たのしみっ」
普通なら。
子供の悪戯。意味のない、当てずっぽうの。
それで終わってしまう話。
けれど。
二週間後の、水曜日。
応募した懸賞が偶然当たって歓声を挙げた男性の妻が、記念にカレンダーに丸をつけようと言いだして。
「あら?今日何かあったかしら?もう丸がついてるわ」
男性の顔から微笑みが、消えた。
ママが、喜ぶ、日。
偶然?
反射的に自分で答えた。
いいや、多分、違う。
気付けば今まで他にもあったと思い至る。
あれも。これも、それも!
彼は娘の眠る部屋を見やり、そして。
また、微笑みを顔に浮かべた。
「花梨が書いたんだよ」
「あら、そうなの」
「うん、どうやらあの子は匠と同じみたいだ」
「あら・・・そうなの」
「うん」
それが少女の未来が確定した日の、会話だった。
//4歳
コメント(0)
/
トラックバック(0)
|
0〜9歳
|
コメントを書く
名前:
メール:
URL:
コメント:
コメント
トラックバック
トラックバックURL