安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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雪だるまを並べ
こんな田舎の山奥の小さな村なんて、あの悪魔にはどうにでもできるものだった。
山の上だから雪が深くて、冬は隣町に行くことすらできない、陸の孤島。
あの悪魔にとっては、好都合な。
私たちは、村の人間は誰も何も知らなかったのに。
この村に何かが隠されてるとか、誰かが逃げてきていたとか。そんなことは、何も。
田舎だから村人は皆顔見知りで、親戚みたいなもので。
朗らかに明るく、日々を普通に過ごしていただけなのに。

あの悪魔は、そんなことは微塵も関係なく、この村を踏みにじった。
黒い髪、黒い目、黒い服。
青い黒髪のバケモノを連れた、悪魔が!

銃声。
悲鳴。
炎の色。
血の色。

ついさっきまで無縁だったものが、瞬く間に増えていき。
阿鼻叫喚を、この目で見た。

どうしてこんなことに・・・・・!!

その言葉だけが、空しく思考を埋め尽くす。

あの男は、悪魔だった。
この村は、悪魔に気に入られてしまったのだ。

何処へ行っても死体と銃弾が転がっている。
誰を訪ねても、もう息をしていない!
いつも降る雪も、まるで悪魔の味方のように思えた。
雪に足を取られて、何度も転ぶ。
此処も駄目。
此処も、だめ。
此処も。

ああどうか。
どうかどうかどうか、誰か・・・っ!!


一人でも、いいからっ!!


けれど願いは空しく、悪魔はそれほど優しくはなかった。

悪魔とバケモノの声が、聞こえる。

「生存者は?五分後、動いてる人間は居るか?」
「・・・・・・」
「花梨。さっさと答えろ。『仕事』だ」
「・・・・・・・・・いない・・・・」

バケモノは嘘をついたと思った。でもそれがどういうことかまでは、思考が働かない。
だって、私は生きてるのに。
それだけを、思う。
いないわけ、ないのに。

その所為で死ねなかったのだと悟ったのは、全てが終ってから。

優しさ?
情け?

―――――フザケルナ。そう思う。

悪魔の癖に。
バケモノの癖に!

思ったのは、さっきも言った通り、全てが終ったあとだったけど。

悪魔とバケモノが去って、その手先が教会を爆破して、何かを回収して。
私は感覚のなくなった手足を無理やり動かして、皆を。
・・・・・・動かなくなった、皆を、小さな村の、小さな広場に、引き摺って。
爪がはがれるのも無視して、穴を掘った。
一心不乱に。
何をしているのかも考えず、ただ、動いた。
気にしなかった。
考えなかった。
考えたら、もう、何もできなくなると、わかっていた。

穴を掘って、埋めて。
また穴を掘って、埋めた。
何度も何度も何度も、機械的にそれを繰り返した。
雪はいつもと変わらず、しんしんと降り続いて居た。
蹂躙された足跡が雪に覆われていく。
毒々しい赤が、白に隠されていく。
瓦礫も捨てられた銃も、化粧を施されたように、白を被って。
全部埋め終えてから、次に、雪だるまを作った。
板なんて探せなかったから。
石なんて、雪に埋もれてよくわからなかったから。

並べる。
並べる、並べる、並べる。
一つ作って、また一つ作って、もう一つ作って。
笑っていたことを思い出しながら。
話していた人を思い出しながら。
代わりのように。
空っぽの村に、誰かを住まわせるように。
でも雪だるまは、喋らないけど。

涙は流した端から凍っていった。









「・・・・私の村は悪魔に滅ぼされたの」
「悪魔・・・?」
「そう。黒髪で黒い目の、悪魔」

あの悪魔のことは、今でも忘れていない。
あのバケモノの、声も。

「ねぇあなた、知らない?」

私は並んだ雪だるまに、復讐を、誓った。









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