薄氷の上を歩くように |
2007年12月27日 23時33分
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ぼくの命はぼくの物ではない。
生かすも、殺すも。
全ては「彼」の、声一つ。
「花梨」
この人に名前を呼ばれるのが、嫌だ。
ぼくを呼ぶのは使うため。
出される命令は、どれも恐ろしい。
けれどぼくにはその声に振り向かないという選択肢は、ない。
「・・・・・はい」
顔を見上げる。
嘲笑を刻んだ唇を目にした辺りで、視線を逸らした。
目は。
見たくない。
冷えた暗い瞳は、絶望を呼起こすから。
でも、逃れられるはずがない。
顎を取られて、無理やり目を覗きこまれた。
怖い。
この人の目は、ぼくの世界を黒く塗り潰す。
試される。
ぼくの心を。
ぼくの力を。
ぼくという、存在を。
まだぼくを、生かしておく意味があるか、どうか。
「三日前、見せた男を覚えているか」
「・・・・覚えてる」
「そいつが今日、夕飯で何番目の席に座るか視ろ」
それは薄氷の上を歩くような、行為。
「・・・・・・、・・・・さん、番目」
顎から手が離される。
同時にもう用はないと、視線も外された。
もし。
この予知が、外れたら。
ぼくの足元の氷は砕け散る。
延々と。
ぼくは果てのない、薄い氷の道を往く。
//14歳
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