冬といえば鍋 |
2007年12月26日 03時16分
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「冬と言えば?」
言われて、首を傾げた。
素直に浮かんだのは、白い雪とか。
特に深く考えず、そのまま答えた。
「・・・・雪?」
「ぶー」
擬音語が返ってくる。
どうやらハズレ、らしい。
しかしどの答えを求められていたかがさっぱりわからなくて、ぼくはやはり首を傾げた。
そもそも店に足を踏み入れて開口一番聞かれたものだから、唐突すぎだと思う。
古書喫茶の店主はにこりと笑って、いつも通りに口を開いた。
「冬といえば、鍋です」
・・・・・・・は?
ぼくは数秒、意味を掴み損ねて固まった。
鍋?
「あれ、ご存じないですか?鍋」
「いや・・・えっと、多分、知ってるけど」
「冬といえば鍋だと思うんです。ということで、用意してみました」
「・・・・此処に?」
「ええ、此処に」
此処は何時の間に鍋料理を出すようになったのだろう。
現実逃避気味に、そんな風に考える。
しかしそんなぼくに構わず、奥からは本当に鍋をしているような声がしてきた。
「・・・・これ、何かしら」
「ふむ・・・・食べてみればわかるのではないか?」
「嫌よ」
「それは私に食べろと言う意味か、お主」
「さぁ?・・・・コレってもしかして闇鍋?」
「闇鍋とは暗くしてやるものではなかったか」
・・・・しかもちょっと行きたくない会話内容だ。
どんな鍋があるのだろう。
取り出して何かわからない具って一体。
目の前の会話相手はあくまでもにこにこと、人の良い笑みを浮かべている。
「さ、不動さんも、折角ですからどうぞ」
要らないとは、言えない「何か」が、あった。
//21歳
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