安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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全ての恋人たちに贈る
町は赤と緑のクリスマスカラーが彩って、ネオンではない光が至る所に溢れる。
可愛らしい形のモニュメントが並んで、赤と白の服を着た人もちらほら見える。
そんな日。
今日は、クリスマスイヴ。

仲睦まじく寄り添って歩く恋人たち。
ケーキ屋さんの前で笑顔を零す母子。
片手に包みを持って、急ぐ人。

街が「幸せ」に溢れている。

街角で風景に埋没しながら、ゆっくりと目を閉じる。
人通りの多い通りは、ぼくには幾つもの風景が重なって見える。
その風景は、目を閉じても消えない。
見えるのは、通り過ぎる誰かの断片的な未来。
近いもの遠いもの、暖かいもの綺麗なもの。
判断できるほどちゃんとは見えない。
ただなんとなく、そんなイメージを感じる画たち。

暫く経ってから目を開けて、上を見上げた。

漠然と、雪が降ればいいと思う。
意識を凝らせばこの場所の未来は見える。
暗い空からちらほらと降る、白い、花。

ああ。

自然、微笑んだ。

それは全ての恋人たちに贈る、空からのプレゼント。

「・・・・メリー、クリスマス」

するりと口から言葉が零れる。
雪はぼくが降らせたわけではないけれど。

なんとなく、嬉しい気分になった。









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