雪の結晶 |
2007年12月23日 05時30分
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ぼくは普段、暇さえあれば外に居る。
特に目的もなく、ふらふらと。
朝でも昼でも夜でも、関係なく。
寒くても、暑くても。
「外」は。
ぼくにとって、「自由」の象徴だから。
自分で借りているアパートの一室も、嫌いではない。
あまり個性のない部屋だけど、少しずつ、ぼくの「色」が見える部屋には、なってきたから。
本当はもっとインテリアがあればいいのだけど、買っていないのだから仕方がない。
「自由」であるのにあまり物を買えないのは、ぼくが弱いから。
物を買えば、執着が出来て。
愛着が、沸く。
それが恐い。
大切なものが、増えることが、恐い。
だって、破壊は一瞬だ。
あの人が少し気分を損ねれば、あっというまに、消えてしまう。
物でも。
人でも。
どちらにしろ、関係ない。
あの人は・・・・ボスは、恐い、人だから。
それはぼくに刻み込まれた真実。
何度も何度も「教えられた」、コト。
だから部屋の中が淋しいのは仕方がない。
誰の所為でもない、ぼくの、所為。
それでもインテリアを見るのは好きで、服やアクセサリーだって、見ているのはとても楽しくて。
例え窓越しであっても、何処か心躍るものだ。
ぼくも、一応、女の子、なのだし。
可笑しくはないと、思う。
否。
思ってから、苦笑した。
もう。
「女の子」という、年ではない。
その年代は、何処かへ行ってしまった。
「あ・・・・・・・」
ショウウインドウの中央に、小さな銀のアクセサリ。
雪の結晶を象った、プラチナ。
小さな水色の宝石も一緒に鎖に通されている、ネックレス。
目が留まって、そしてその場に立ち止まる。
ついガラス窓に手を付いて、じっと覗き込んだ。
「・・・・・・可愛いな」
実はぼくはまだ、本物の雪を見た事がない。
10歳までに居た場所にはあまり雪が降らなかったし、それ以降、「仕事」で外に「持っていかれた」ときも、雪は降っていなかったから。
映像では見たことあるし、イメージは、わかるけど。
本当にこんな形をしているのだろうかと、つい思う。
これを見たことのある人は、あまり居ないのだろうけど。
どうしてもそれが気に入ってしまって、買おうかどうか、踏ん切りがつかないながらも店の扉に手を伸ばして。
取っ手を引こうとした瞬間に、コートのポケットから甲高い機械音が鳴り響いた。
―――――――――・・・・
店の取っ手から、手を、離す。
ショウウインドウを一瞥して、軽く目を伏せて。
それからくるりと、踵を返した。
電話に、出る。
「・・・・はい」
もう一度も、振り返りはしなかった。
//21歳
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