誰もいない、私だけの世界 |
2007年12月18日 23時34分
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暗闇に、あの子だけが見える。
その視界は、私だけの世界。
「ひーちゃんってばー」
そんな声が聞こえて、視界を変える。
あの子が消えて、周囲の風景がガラスを一枚隔てて見るように広がった。
目隠しをしていても、不自由はない。
「ひーちゃんー」
「・・・・・何だ?」
答えれば、隣に来ていた一人の神が何やら驚いた顔をする。
神々の中で喜怒哀楽を作るのに一番長けているのは、この男だろうと漠然と思った。
「あ、聞こえてた?」
聞こえてないつもりなら、何故呼ぶのか。
この男は、謎だ。
「何か用か」
「んー、何してるのかなって?」
「あの子を見てた」
「また?」
「また」
私が何をしているか、そんなことを聞きに来たのだろうか、この男は。
「・・それで、用は」
「ない」
暇なことだ、と、思う。
思ってから、己も同じかと内心で嘲笑した。
神など皆、暇なものだ。
何もできることなどないのだから。
用がないならもういいかと、あっさり思考から隣の存在を掻き消す。
視界もまた「普通」に戻せば、暗闇にぼんやりとあの子が見えた。
あの子は幸せとは言いがたい人生を送っていた。
哀れなことだと、思う。
視界に移るあの子は、大抵泣いている。
望まないことをさせられて、苦しんで。
自分を卑下し、存在を憎むことすらして。
けれど、あの子は人を嫌わない。
賞賛に値する。
あの子は自分を責める。自分を笑う。自分を、嫌う。
だが人を嫌わない。世界を、嫌わない。
あの子にとって世界はいつも美しい。
人は皆、愛しい。
驚嘆に値する。
だがそれが、あの子を苦しめているのだけど。
「ねー、ひーちゃんー?」
あの子が泣いている。
私はただ、私だけの世界で、それを見ている。
見ている、だけ。
私以外誰も居ない、暗闇の世界で。
「楽しい?」
よく、わからない。
反射的に、心中で答えた。
//カミサマ
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