抱擁 |
2007年12月17日 23時31分
|
「暗闇から、抜けたくはないですか?」
優しく問いかける声に、ぎゅっと手に力を入れた。
掌に爪が食い込むほど強く、手を握る。
ぼくには、無理なこと。
自由ではない、自由。
会うのも止めなければいけないと、思い続けていて。
迷惑をかけてはいけないけど、でも、ずるずると会いに行ってしまっていて。
もう、止めなければと。
思っていた。
思っていて、でも、ぼくは来てしまって。
そして彼は言ってくれたのだ。
「手を差し伸べたのは不動さんなのに、その手を引っ込めるんですか?」
だって思ってなかったのだ。
知らなかった。
そんな人が居るなんて、まさか。
こんな得体の知れないぼくを、見捨てない優しい人が、居るなんて。
優しすぎて泣きたくなる。
優しさがナイフのように心を抉る。
ぼくはきっと彼を不幸にする。
彼は優しくしてくれるのに、ぼくは何も返せない。
破滅を連れて来る、だけ。
やっぱりきっと来てはいけなかった。
会ってはいけなかった。
言っては、いけなかった。
後悔ばかりが押し寄せて来て、瞳から涙が零れた。
泣きながら、首を、振る。
すぐに手で顔を覆ったけれど、涙は止まってくれなかった。
いけない。
いけない。
いけない。
それは言ってはいけないこと。
それは思ってはいけないこと。
それは考えては、いけないこと。
泣くだけで何も言えないぼくに、彼は困ったように笑って。
ぼくの髪を撫で、そして子供にするように、抱き締めて背中を撫でてくれた。
暖かい人。
優しい人。
優しすぎる、人。
言ってはいけない。
言ったら。
だって言ったら、きっと。
彼はやろうとしてしまうから。
頭ではわかってる。
最良の選択。
最高の行動。
なのになのになのに、ぼくはいつも失敗を繰り返す。
「・・・・っ、ぅ、ひっ・・・く・・・・ぅ・・・・!」
嗚咽がどんどん止められなくなって、暖かさは涙を増加させて。
ぼろぼろと涙を流しながら、ぼくは。
「・・・・・・・たすけて・・・っ!」
言ってはいけない言葉を、言った。
ぼくはいつも。
最低の過ちを、繰り返す。
//21歳?(多分)
|
コメント(0)|トラックバック(0)|21歳以降|
|
|