安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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一組の手袋
男物の手袋を、一組、買った。

最初に買ったのは毛糸だった。
手芸道具を売っている店に行けば色々な毛糸があって、少し迷った。
毛糸とイメージするものはそんなになかったので、意外に思う。
色は青み掛かった灰色。決めた理由は、綺麗な色だと思ったから。
そして一緒に編み棒や本なんかも買って、数日毛糸と格闘した。
仕事で呼び出される以外は部屋に篭って、ずっと頑張って。
出来上がったときは、とても嬉しかった。
けど。
出来上がったものを見て、苦笑した。

最初から手袋に挑戦したのが間違いだったのかもしれない。
マフラーとか、そういうのなら、まだ、きっと。

ぼくは編み上がった一組の手袋を、引き出しにしまった。

不格好で、網目はずれているし、あまり暖かくなさそうで。
それなら、きっと既製品の方がいい。
すぐに逃げるのは悪い癖だと思ったけど、簡単に変えられることではなかった。

彼なら、どんなに不恰好でも、何も言わずに受け取ってくれるとは、思うけど。
ぼくが、申し訳ない気分になってしまうと思うから。

贈り物を作るのも、選ぶのも。
何年ぶりだろうと思う。
心が揺れて、そして弾んだ。

もうすぐ、クリスマス。

あまりやらないと、言っていたけど。
受け取ってくれるだろうかと、買った手袋をラッピングして微笑んだ。









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