安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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朝だからと言い訳して
くらりと、一瞬意識が何かに呑まれる。
昨日の「実験」の後遺症だろうか。何か薬を打たれたのは覚えているから、身体に支障が出ても不思議はない。
重度の貧血に近い感覚。思わず立ち止まったら、そこに声が掛かった。

「大丈夫ですか?」

顔を上げて、視線を声の方に向ける。
石段と鳥居が目に入って、何時の間にか神社の前まで歩いて来ていたことに気付いて苦笑した。
甘えている。
縋ってしまっている。
迷惑をかけることしか、できないのに。

しっかりしろと心の中で呟いて、「おはよう」と笑みを向けた。

「大丈夫。朝はちょっと低血圧で」

何でもないと、取り繕う。
そう思いたい、というの思いも、確かにあった。

心配をかけてはいけない。
心配してもらえる、資格なんてない。

いけないと。
そんな考えだけが、頭を占める。

ああ、ぼくはなんてずるい。

隠すのなら、来てはいけなかったのに。

「・・・朝から偉いね。掃除?」

一体ぼくは何をしているのだろう、と、思う。
心配してくれた人に、嘘を返す。
それはとても酷い行為で、自分に吐き気がする。
それでも何とか隠し通して、その場を離れて。
角を何度か曲がって神社が見えなくなった辺りで、近くの壁に寄りかかった。
ずるずると、力が抜ける。

ああ。

本当に。
ぼくは一体、何をしているのだろう。









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