弾むように歌う声 |
2007年11月14日 23時03分
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Jingle bells, jingle bells, jingle all the way
O what fun it is to ride In a one-horse open sleigh―――・・・
ショーウインドウのディスプレイに触発されて、小さく歌を口ずさむ。
ハロウィンが過ぎればすぐにクリスマス。
それが過ぎれば今度はお正月。
商戦は常に一歩先へ進んでいる。
まるでそれは、ぼくの視界のように。
Jingle bells, jingle bells, jingle all the way
O what fun it is to ride In a one-horse open sleigh
自然と浮かぶのは微笑み。
楽しい歌は、人を楽しい気分にさせる。
クリスマスもお正月も、ぼくにはあまり関係ないけれど。
それでも、心が軽く浮き立っていく。
A day or two ago,I thought I'd take a ride,And soon Miss Fanny Bright
Was seated by my side;
The horse was lean and lank;
Misfortune seemed his lot;
He got into a drifted bank, And we, we got upsot.O
口ずさんでいただけの歌声は徐々に音量が上がり、ぼくは人目も気にせず歌いながらメインストリートを歩く。
人の波を縫えば、何人かがぼくを振り返った。
Jingle bells, jingle bells, jingle all the way!
O what fun it is to ride In a one-horse open sleigh
Jingle bells, jingle bells, jingle all the way!
O what fun it is to ride In a one-horse open sleigh――――・・・
気分が乗れば足取りも軽く、ショーウインドウの立ち並ぶ通りを軽快に歩いていたぼくの足が、そこで止まる。
コートのポケットの中で、初期設定のままの電子音が鳴り響いた。
「・・・、・・・・残念」
視えてしまった。
この携帯が、鳴る光景が。
「――――・・・Jingle bells, jingle bells, jingle all the way・・・」
無視はできない、電子音。
それでも数回のコールは無視して、ようやくポケットから取り出した。
周囲の喧騒と明るいディスプレイ、「日常」が、急速に色を失い冷えていく。
目を閉じて、細く長く息を吐いた。
吐く息が、白い。
「・・・・・・・・はい」
仕事だ、とは、聞かなくても視なくても、わかる言葉だった。
//21歳
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